差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2005年5月5日木曜日 11:38
宛先: 銭湯ML
件名: 広見湯(江南市古知野町広見)

ナカムラです。

今日(5/1)は、「広見湯(江南市古知野町広見)」に行ってきました。江南駅(名鉄犬山線)から、0.7キロ、5分程度です。

昭和29年6月1日に丹羽郡古知野町・布袋町、葉栗郡宮田町・草井村の4か町村の合併により江南市が発足。現在も住居表示として「古知野町」という名前を残しているけど、ここら辺りは市町村としての「古知野町」の中心地だったのだろう。江南駅もかつては古知野駅だった。

同湯近辺の商店街は、戦災にも遇っていないらしく、戦前からの商家建築が多く興味深い。もっとも、シャッターを下した店や、店舗が解体された更地も多い。こっちでは、更地を舗装もしないので、雨のせいもあってうらぶれた感じがする。

近くに10年くらい前に廃業した銭湯(旧柳湯)の建物とコンクリの煙突がそのままで残っている。そして、商店街の先には、江南市で残り2軒になった銭湯のもう片方の栄温泉がある。モルタルのファッサードの鄙びた感じを漂わせている銭湯だ。

さて広見湯。
同湯の創業は、曽祖父の頃で明治40年代。恐らく創業100年くらいだろうと。今の建物は昭和の初めころの建物らしい。なにせ、最近建て替えたが、それまでの母屋は江戸時代のものだったらしく、半端ではない旧家のようだ。ファッサードはモルタル造ながら、4連のアーチ窓を持つ凝った洋風の意匠になっている。煙突は油井型。和風の商家建築が多い中で今でも異彩を放っている。建てられた頃は、驚かれただろうと思う。

強い雨の中、2時間近くうろうろしていたので、ずぶ濡れになっている。戸を開けるとコンクリのタタキ。そこで350円を払う。

17:30分。既にパジャマを着た小学生の兄弟が、「おやすみなさい」と番台の女将に丁寧に挨拶して帰っていく。なんか、とてもいい光景だった。きっと、まっすぐに成長していくんだろうな。

下足箱の蓋は、金属ではなく、木製。木製で引き上げる扉を初めて見た。錠は小振りの「SEKI−JYO」。

脱衣所の幅は、2間半。奥行きは、タタキ半間、脱衣スペース2間半、緩衝スペース半間といったところ。名古屋銭湯では「島ロッカー」には遭遇していない。そのせいもあるけど、どこも広々と感じる。

ロッカーは、「SEKI−JYO」の付いたものが壁側に並んでいる。脱衣籠も2つほど積まれている。そういえば、岡崎の龍城温泉もこちらも丸籠。四角の籠は京都以西なのかな・・・。

その他、昔ながらの飲料ケース、旧型マッサージ機、アナログ体重計なんかがある。最近まで天井扇があったが、地震で危ないので、最近は使っていなかったので撤去したとのことだった。

緩衝スペースの造りが凝っている。脱衣スペースとの境には、土俵の俵のようにタイル張りの境がある。上にはガラスが渡してあり「同年会」と刻んである。祖父の同窓仲間からの寄贈らしい。流し付近の細かなタイル使いも微妙な曲線で構成された見事なもの。さらに、浴室への戸の上には、趣き深い富士山のモザイクタイル絵がある。

浴室。幅は2間半、奥行3間。天井は四角錘型の板張りで真中に四角い湯気抜きがある。カランは男女境に6、外壁側に3。取っ手は鶴の羽をあしらった赤・青で、東京銭湯のように取っ手を押し下げるもの。大きさは2回りくらい小さい。驚いたのは、センターのカランの下には洗い湯を流す溝がない。

外壁のカランが少ないのは立ちシャワーがあったためらしい。今は、レトロは緑青を吹いた水栓2つが、綺麗な浴室にアクセントをつけている。

男女境は透明な模様ガラス。そばに立つとシルエットが映るかも知れない。床のタイルは白の八角形に深緑の小さな正方形を組み合わせたもの。神奈川では古い銭湯に多い造りだ。

浴槽は、真中に深浅2槽。メインの深槽が41度くらい、手前の浅槽が40度くらい。さらに、奥壁側に麦飯石の湯と電気風呂。男女境には「かぶり水」の槽があり、冷たくない水が入っている。

ビジュアルは、奥壁にモザイクタイル絵。水車が描かれた山紫水明の図で、これも趣き深いいい絵柄だった。ただし、補修する職人の関係で、維持するのは大変なようだ。

上がりは、森永のフルーツ牛乳。80円と安い価格で提供している。今回の名古屋行では名古屋牛乳に出会えなかった・・・。

そうこうしているうちに、女湯から客が入ってきて、トイレの方に入っていった。同湯のトイレは1つで、女湯の客も男湯を通ってトイレに行くのか?どうやら、女将とは同年代だけど、同湯の娘さん。トイレの脇に母屋へ通じる通路があるようだ。

江南市のレトロ銭湯。雰囲気、客層、湯もいい。モザイクタイル絵などタイル使いもいい。何より、同湯がある街の雰囲気がいい。