差出人:Masayuki Nakamura
送信日時: 2016年2月21日日曜日 22:50
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 入間湯(目黒区目黒本町)

ナカムラです。

今日(8/8)は、「入間湯(目黒区目黒本町)」に行ってきました。武蔵小山駅(東急目黒線)から、0.5キロ、5分くらいです。

先ずは、目黒美術館に建築家の「村野藤吾の豊饒な世界」を見に行く。目黒川の畔の区民プールで憩うという昭和な風景に接した後、隣の美術館に入った。

百貨店、庁舎、オフィスビルごとに、1/200あるいは1/100の設計図から起こされた精巧な建築模型が並ぶ。中には建設まで至らなかったアンビルドの建物や、旧都庁舎などコンペに落選した設計図からの模型もあった。

白無垢の模型で色や素材感はないものの、見慣れた建物でも、模型を見るように全体感を把握することは出来ない。そもそも屋上や屋根の意匠など、今回初めて知ったことも多かった。さらに、アンビルドなど実在し得なかった建物の模型は非常に興味深いものだった。

立秋を過ぎ昨日から急に過ごしやすくなった。西小山に移り商店街を散策。相方はいつもの店でお気に入りのゼイタク煎餅などを大人買いしている。

その後は、町田さんをはじめ実行委員会メンバーと合流して10月の銭湯ナイトの打ち合わせ。今年も満員札止めになるだろう企画。三々五々解散した後、おもむろに銭湯マップを広げ、隣駅の武蔵小山「入間湯」に進路を取る。

地上40階にもなるマンションと商業施設からなる大規模な再開発を控え、駅前の趣ある古くからのスナック街は近々取り壊しが始まる。独特の景観も消失が近い。

さて、入間湯。80年近くの歴史がある戦前からの古豪。寂れ切った商店街にやや斜めに建っている。昭和22年の航空写真では、今は無い高い煙突を見ることができる。

現在の建物は昭和30年代か40年代の建物だろうか。伝統的な木造の銭湯ながら、脱衣所の上などに居宅あるいはアパートが増築されている。ゴツゴツと厳つい大型のファッサードが異彩を放っている。

埼玉県の入間と何か関係があるのだろうか。そして、気になりながら結局は入り損ねた、狭山の「入間川浴場」が脳裏を掠めて行く。

のれんを入れば、アルミ板鍵の松竹錠とSakura2錠混成の下足箱。透明なアクリル扉は赤・黄・緑とカラフルだ。自動ドアを通れば、赤絨毯敷きのロビーにカウンター。相方がざん切り頭のカウンター氏に2人分の風呂銭を渡す。その筋の者の証、スタンプ帖を差し出しながら話をするものの、迂闊にもカウンター氏に屋号の由来を聞きそびれてしまった。

節電が過ぎて少し暗いのが残念だけど、ロビーの壁に油絵の大作が掛かり、壁の一部には金屏風調の”見返り美人”もある。

脱衣所に進むと、幅3間、奥行4間、天井高2間と2/3の大きな空間がある。外壁側にスチール製のロッカーが並ぶだけの何処かガランとした空間だけど、天井には8枚の花弁を付けたような意匠で桟が組まれている。”花”の中心円には日本画による菊花があしらわれている。いずれも鈴和建設の十八番。恐らく同社が中普請を手がけたのだろう。脱衣所の上に増築したので、花弁の真ん中に支柱があるのは構造上致し方ないのかな。

さらにビジュアルは続く。浴室との境には熱帯魚と海藻のガラス絵、ロビー側の上壁には宇宙から見た青い地球と宇宙船などが描かれている。鈴和建設による竹林の黄緑色の風景写真はよく見るけど、同じ要領で絵を元ネタにしたのだろう。いい素材を選べば客を惹き付けるビジュアルに仕上がるようだ。ただ、下から絵をライトアップする構造になっているものの点いていないのが惜しい。

浴室の広さは、幅3間、奥行6間とかなりの大型。天井高は2間と2/3のカマボコ型でピンク、クリーム、ライトグリーンの縞々。外壁側は全面がガラスブロック積みになっている。目黒区銭湯に多い三色の塗り分けに遭遇するのは数年振りかも知れない。懐かしい。

島カランは1列で、カラン数はセンターから7・8・8・6。床のタイルはベージュ色のやや大振りで厚手のもの。

浴槽は、センターと奥壁に接し、栃木の銭湯のように4槽が田の字型に置かれている。奥側2つが寝湯×2、8点座ジェット×2で双方水枕付き。手前がバイブラの主浴槽と水栓が外されている熱い湯。普通の浴槽は42度強。熱い浴槽は43度強といったところか。特徴という特徴は感じなかったけどいいお湯だった。

外壁側には1間四方の、広くて無料のスチームサウナ。温度はちょっとマイルドだけど石張りの座面にチョロチョロと水が流れる快適なものだ。

ビジュアルは、奥壁にコミカ調の2羽の丹頂が求愛のダンス。その上を1羽の丹頂が空に向かって飛翔する図。さらに男女境には額縁のように縁取りされたタイル絵。ヨットハーバーや洋風庭園を描いた洋風の新しい絵柄。しかし、判読が難しいほどに退色しているのが残念。

土曜日の21:00から21:50に滞在。相客は8人ほど。無料のスチームサウナがある上に、硝子絵、宇宙から見た蒼い地球の絵など、浴室だけでなく脱衣所にもビジュアルが豊富。少しずつ珍しい部分があって興味深い銭湯だった。

上がりはもうすぐ消失する駅前のスナック街を少々徘徊。そして帰路に就いた。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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        以下、まもなく消失する武蔵小山駅前のスナック街



































































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