目次へ

差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2015年11月8日日曜日 8:34
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 亀の湯(杉並区桃井)

ナカムラです。

今日(4/17)は、「亀の湯(杉並区桃井)」に行ってきました。荻窪駅(中央本線等)から、1.6キロ、18分くらいです。

会社を出て丸ノ内線で荻窪駅まで。暖かいなか上空に結構な寒気が流れ込んでいるらしく、天気予報は局地的に大雨が降ると報じている。風も強いので駅から関東バスに乗り「清水二丁目」まで。バス停からは0.2キロくらいだろうか。

昭和22年の航空写真では更地だった。昭和38年の写真には黒瓦の大きな銭湯が写っている。敷地の広さからして、木造銭湯の時代はかなり大きな建物だったようだ。

昭和56年に今の3階建てのビルに建て替えられた。1階は公衆浴場「亀の湯」。2階は1階とは独立した「荻窪ラドン・サウナセンター」になっている。

西荻窪・文化湯、隣湯のGokurakuyaも2階の独立のサウナ部があるものの、現在は閉鎖されている。銭湯の周辺事業への多角化だったんだろうけど、広く見渡してもこういった独立サウナ店のが続いているのは稀だろう。

建物の側面に2つ入口がある。手前の目立つ方がサウナ部。奥に地味なのが亀の湯への入口だ。

中に入ると下足箱が並んでいる。自動ドアを入ればパーテーションで区切ったささやかなロビースペース。相方が女将さんに2人分の風呂銭を渡す。

パーテーションには同湯のウリのラドン温泉の会社の古いポスターが額装されている。「株式会社ラドン医科学事業団」という何とも胡散臭そうな社名とともに、大型コンピューターのような人間の背丈ほどもあるラドン発生装置が写っている。実に胡散臭い。

脱衣所の広さは、幅2間、奥行3間ほど、天井高は2間。大黒柱の丸時計からすれば鈴和建設によるもののようだ。意匠は、梁は欅材による張り板、天井は凸凹まで樹脂で造り込んだ竹による網代を模している。床もクッションフロアながら木調で見栄えはなかなかだ。

ロッカーは外壁側に松竹シリンダ式の物が並ぶ。その他、Yamatoのデジタル体重計やテレビが置かれている程度。浴室との間に温室のような緩衝地帯を設けて浴室との間を2つの扉で仕切っているのが珍しい。寒気あるいは湿気を遮断するためなのか、東京では滅多に見られない構造だ。もっとも、脱衣所側の扉は開け放たれている。

浴室の広さは幅2間半、奥行4間。天井高は2間でガン吹き&ペンキ塗り。島カランは1列でカラン数はセンターから6・5・5・4。床のタイルは鈍くパールの光沢を湛えるユリ模様の白とグレーのものが大柄な格子を組むように張られている。

浴槽は、奥壁に沿った深浅2槽。主浴槽が大きな岩風呂風カプセル風呂。フィトンチット香る”ラドン温泉”になっている。主浴槽が温室のような中にあるのは経験がない。しかも、お湯は40度くらいだろうか、かなりの温湯になっている。しかし、石造りの樋から落とされる湯で室内は湯気が充満。身体全体がじんわりと温まっていく。

ほとんど相客がないので、この空間を1人占め。やや照明を落としていることもあって湯治場にいるような気分にさせてくれる。お湯の温度に物足りない向きには、オープンな隣の深槽(座ジェット×2)は42度強になっている。

ビジュアルは、外壁側の上部に鈴和建設の十八番、畳三畳大の「箱根芦ノ湖、富士山、箱根神社の赤い鳥居」の写真。さらに、脱衣所との境には摺り硝子の絵がある。

金曜日の19:55から20:45に滞在。相客は入浴前後の入替わりで4人ほど。浴室ではほ1人だけの時間が長かった。古いビル銭だけど、静かで清潔。印象に残るラドン温泉だった。

上がりの一杯は、北口のバラック飲み屋が残る一角の「とり元本店」。以前は駅前で焼き鳥の煙を濛々とさせていたけど、ロータリーの拡張で、小綺麗になって路地の奥に移っている。

ここのビールのジョッキには親父2人がプリントされている。寡黙な焼き方と”バキャロー!”とスタッフを鼓舞する河岸に居そうなパンチパーマ。とり元の親方衆2人なのだろう。

パンチパーマは我々に丁寧に注文を聞き、振り返っては荒々しく厨房にオーダーを通す。その豹変振りが何ともおかしい。合間合間に”バキャロー!””ぼやぼやしてるんじゃねぇー!”という言葉が聞こえてくる。若手スタッフに喝を入れながらの、この元気な接客が最大のエンターテイメントではないだろうか。

もつ焼きはもちろん、北海道の食材に特色を感じる料理はどれも美味しく値段も安い。年々、この一角のアングラ加減が減って寂しいのだけど、線路際の「2号店」とともにまだまだ気を吐いている。

*************************************************
ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
*************************************************






























                           亀の湯向かいのノコギリ屋根が連なる住宅










新宿より西側で最大のヤミ市があった荻窪。引揚者厚生マーケットなどは整理され駅前広場となったものの、
その東側に位置した中央マーケットや国際平和第二マーケットは、荻窪北口駅前通商店会、アサヒ通り、
荻窪銀座街として一部が現存している。