差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2003年10月27日月曜日 0:38
宛先: 銭湯ML
件名: [sento-freak:04507] 亀の湯(横須賀市汐入5丁目)

ナカムラです。

今日(10/26)は、汐入の昭和2年創業の「亀の湯(横須賀市汐入5丁目)」に行ってきました。
汐入駅(京急)から5分程度です。

汐入の商店街は日曜日なのにシャッターが下りている店が多い。
そんな商店街の終わり、少し路地に入った、やや判りにくい所にあります。

入口は小さいながらも唐破風。多少崩れ気味。
暖簾の上には、ひし形と長方形のみだけど、赤・黄・緑の色ガラスを嵌めこんだ凝った意匠がほどこされている。
ステンドグラスではなく、色ガラスをパテで木の桟に固定しているようです。

敷居があるので、昔は大戸があった模様。今は入口に戸はなく、暖簾をくぐると番台へ通じるアルミサッシの戸が男女「ハ」の字型にある。
正面にタイル絵。これが変っていて、マジョリカタイル4枚で瀧の中で鯉が跳ね上っている図。「H.S.」とイニシャルが彫ってある。
その上に、ラーメンどんぶりにあるような、鳴門模様が連続したマジョリカタイルの帯がある。

戸を開けると、裸電球がぶら下がっており、正面が下足箱。旧型のおりどり錠が白い粉を吹いている。
下足箱の蓋もウッディなもの。
靴を入れて、木札を抜くと、「使用中」と墨書で書かれている文字が出てくる。

番台は低く広いもの、女湯の脱衣所の半分くらいが見渡せてしまう。
まぁ、誰もいなかったが・・・。
横須賀では、女将が番台に座っているケースは少なく、たいてい女湯に常駐なんだけど、ここは番台に座っている。
70半ばながら、声に張りがある、笑顔がいいばぁ様だった。

  昭和25年横須賀線の伸延で廃業した佐野の「竹の湯」の出とのこと。
  8歳の時から釜焚きをしていると。
  先週訪れた「常磐湯(佐野町)」とは親戚で、今でも、こちらから薪を廻していると言っていた。

番台の前の柱には簡素な神棚が設えてあった。
関西の古銭湯には多いというが、小生は神棚との遭遇は2回目と限定的。
近くの「子之神社(ねのじんじゃ)」のお札が載っていた。

天井は格天井。格子が50センチ角と普通よりだいぶ小さい。
数えると、男女合わせて奥行き9×横幅15となっていた。
嵌められている天井板は高級な材には見えなかったが、しっかりとした木目があるものだった。

真中に長イスが置いてあるのと、鏡の前に、古いぶら下り健康器が置いてあるだけ。
右奥に計8個のロッカーが縦に埋め込まれているけど、基本的にはみは脱衣カゴを使っている模様。
ロッカーの錠は「MON」「TOKYO」と書かれていた。初めてみるタイプだった。

大きめの冷蔵ケースに白牛乳が5本程度と、コーヒー牛乳が10本程度とガラガラ。
更に、女湯には冷蔵庫がないようで、番台の女将が冷蔵庫から出して女湯の客に渡していた。

浴室は小さいながら2段型の天井。ペンキは結構、剥離している。
島カランは1つで、カラン数は、女湯側から6・3・3・3。カランはWaguriと書かれたボール型の取っ手のもの。
センターと壁側にのみシャワー。島カランには鏡すらない。
しかし、入浴道具を置く部分は改修されて、幅が広く丸みが無いものになっている。

センターにはタイル絵が3枚。
両サイドがマジョリカタイル4枚で構成されているフクロウと湖を走る帆かけ舟。
センターのタイル絵が、ほとんど色が剥げているが、木と湖に竿を差して走る舟、そして山という図。
銘は「峯○」、その下に四角く赤い判子で「大竹作」と書かれていた。

珍しい、「峯雲」作なのかなぁ。しかし、よく判読できなかった・・・。

床のタイルも変っていて、白の八角形のタイルと、こげ茶色の小さな正方形のタイルを組み合わせたもの。
同時期に立てられた逸見の「みどり湯」にも同じものがあった。
洗面器が金属だった時代を経ても、結構、艶があるということは、かなり硬いタイルなんだろうな。

浴槽は深浅の2槽。双方とも1穴のジェットが出ている。
浅いほうは本当に浅い。寝そべる感じ。
温度はかなり熱い、46度以上はあるのかな。入ってても熱さに慣れるということがなく、ずっと熱い。
当然、出ると、体中ピンク色。帰りの電車でもヒリヒリしてたから、かなりの熱さなんだと思う。
そう、2つの浴槽の立ち上がりに、それぞれかなり立体的な椿(牡丹?)の花のマジョリカタイルが嵌められている。

ペンキ絵は、例の縦に並んだ板に直接描かれているもの。富士山、川、そしてそれにかかる木橋。なかなかいい図だった。
おそらく、北鎌倉の新世美術。
おやじさんの作なのかな、薄紫色の富士山もいいし、いつもの大味なものとはちょっと違って良かった。

昭和初期の姿をかなりとどめている、古式ゆかしい銭湯でした。




大黒湯