差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2014年11月30日日曜日 7:39
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 菊乃湯(豊橋市新川町)

ナカムラです。

今日(9/27)は、「菊乃湯(豊橋市新川町)」に行ってきました。豊橋駅(東海道本線)から、1.0キロ、12分くらいです。

豊橋駅に停車するひかり号は2時間に1本ほど。豊橋で在来線に乗り継いで、先ずは天然記念物の竹島を望む高台にある「蒲郡クラシックホテル」に向かう。

昭和9年築。城郭風の望楼を持つ戦前派のクラシックホテル。外貨獲得のために旧国鉄の呼びかけで建てられた、雲仙観光ホテルや琵琶湖ホテル(現、大津館)などと並ぶ外国人観光客向けだったホテルのひとつ。

名古屋の名門繊維商社タキヒョーによって建てられ、近年は「蒲郡プリンスホテル」として営業していた。現在は浜松資本の呉竹荘グループに経営が移っている。

今回は初めて着物に角帯という和装での旅行に挑戦している。生憎、本館のメインダイニングは結婚式の披露宴が入っていたので利用できなかった。本館よりも古い、築100年ほどという離れの「竹島」で懐石料理を頂いた。

知らなかったけど、蒲郡クラシックホテルは海辺にあった和風旅館の別館として建てられたようだ。小津安二郎の映画「彼岸花」に、天然記念物の竹島からホテル方向を映したシーンがあって、ホテルとその下に大きな旅館が写っている。

竹島を眺める離れの客は小生たちだけ。秋の味覚も美味しく、食事の後の本館での喫茶部活動も佳かった。初めての着物での旅行もなんとかこなせて、なかなか趣深かった。

三河三谷や形原辺りの花街や赤線跡も辿りたかったけど、時間の関係で豊橋に戻り、段々と早くなってきた夕暮れ時、菊乃湯に向かう。

五月の連休に豊橋を訪れた時、日曜日の定休なのに外で写真を撮っていた小生たちを招じ入れ、内部を撮影させてくれた。帰り際、長くても年内で営業を終える事になるだろうと話され、気になっていた。

風呂銭は420円。難儀しながら番台を昇り降りされていたけど、お元気そうだった。

脱衣所の広さは、幅2間半、奥行3間。天井は簡素な平格天井。ロッカーはツルカメ錠のものが外壁側に並ぶ。豪華な材料で造られた建物ではないけど”昭和30年代”がそのまま残っているような空間だ。

同湯のロッカーの木製扉の裏側には、昔の色々な広告が貼られてる。今日使ったロッカーは水色の精文館書店のものだった。きっと廃業しているんだろうと思ったけど、翌日、トキワ通りという商店街を歩いていたらスマートボールが入る古いビルに残っているようだった。

浴室の広さは、幅2間半、奥行4間。天井は木板ペンキ塗りの2段型。島カランはなく、カラン数は男女境に8機のみ。タイル類は更新されていて、床は10センチ角ぐらいの足触りのいい厚手のものが使われている。男女境には懐かしい「水飲み」がある。試しにコックを捻ると噴水はかなり低い男女境を越えた。昔、こういった悪戯をしてよく叱られたことを思い出した。

浴槽は、外壁側に寝ジェット×2、深さのある素の主浴槽、電気(非稼働)、水風呂、檜薫る無料のスチームサウナというラインナップがびっしりと並ぶ。ステンレスの管を組み上げたボディーマッサージは使用中止の黄色いテープで封印されている。

お湯は42度弱の廃油焚き。水風呂だけが井戸の水になっている。精神の安息にも効くサウナと、コックを捻っての天然水掛け流しの水風呂を堪能する。

奥壁には男女境の上を頂点とする山形に岩が張られ、それ以外の部分は洋風の高嶺を描いた淡い色調のモザイクタイル絵になっている。

奥壁の中央には、塞がれてはいるものの「伝声管」が残っている。”熱いぞ””ぬるいぞ”と、客と釜場の番頭とのコミュニケーションがあった名残り。現在は女将さん一人で自動でお湯を沸かすことができる。昔は銭湯のワンオペなんて想像も出来なかっただろう。

土曜日の17:30から18:30に滞在。相客は3人ほど。ゆったりとした自分としての名残りの入浴を終えた。女将さんに、いつ店をとじるのか聞くのも配慮が無さ過ぎる。近所のラムネ屋が廃業したため大阪のものに変わったというラムネを飲みながら、多少の世話ばなしをするだけだ。

女将さんは、男湯だけでなく女湯の客の途切れを見計らってまで、写真を撮るように勧めてくれた。しかし、夕方の時間、男湯に相客も居たので撮らずに店を出た。

小生は全く気が付かなかった。店の外に出ると相方に休業の張り紙のことを知らされた。再び店に戻り、実は5月の時の閉店を匂わす言葉が気になったので改めてやって来たこと告げた。

豊橋の菊乃湯は11月28日の営業を以て「休業」に入る。休業の意味を聞き忘れたが、設備のこと、燃料高のこと、1人で切り盛りしていることなど、再開の可能性はゼロに近いだろうと思う。

11月28日までまだ日があるので、男女境の鏡に貼られたのは営業案内と思って見過ごすほど小さく、あっさりとしたものだった。近くなったら大きなものにするという。

夜行の「ながら」で初めて豊橋を訪れてから9年。タッチの差でみその湯に入れなかったのを悔いたけど、当時と比べても豊橋の銭湯は大幅に減ってしまった。昨年の洋風の朝日湯に続いて、菊乃湯もじきに暖簾を畳む。

《前回訪問:2014.05.04.》

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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