寿湯（浦安市堀江）

差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2011年7月2日土曜日 0:59
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 寿湯（浦安市堀江）

ナカムラです。

今日（6/25）は、「寿湯（浦安市堀江）」に行ってきました。浦安駅（東京メトロ東西線）から、0.7キロ、7分くらいです。

今日は同僚の美人ファンドマネージャー女史の結婚式にお招ばれ。京葉線舞浜駅から、窓の形がミッキーマウスというモノレール、ディズニーリゾートラインで海辺のホテルへ。ガラスのチャペルで祝婚の礼拝。12階の見晴らしのいいラウンジでご馳走を頂きながら、楽しい時間とともにしこたま飲む。。。

この瀟洒な舞浜のホテルの前のバス停から、1時間に1本ほど東西線浦安駅行の路線バスがある。ホテルのフロント氏に聞いてもやや要領を得ないというマイナーな路線。客が居ないバスがやってきて、霧雨の中、相客おばちゃん1人と乗り込む。

目指すは堀江町の寿湯。手前の「堀江東」で降りたけど、もっと先のバス停がよかったようだ。礼服に引き出物を抱えた身にとって小雨の中での銭湯行脚は少々難儀だ。

堀江は、山本周五郎の「青べか物語」に描かれた、アサリ漁の小さな漁村だった地域。浦安町の中心だったというよりも、”浦安”そのものだったという場所だ。

映画館や劇場もあったという漁村のメインストリートが、今の「堀江フラワー通り商店会」。長さ300メートルくらいだろうか。商店は数軒にまで減り、往時の繁栄の面影を探すのはかなり難しくなった。しかし、かつては船だまりだった境川沿いのこの細い道に、旧漁師町ゆえ、今でも3軒の銭湯が密集して煙突を林立させている。

同湯はフラワー通りのどん詰まり。海との境界だった「境橋」の袂にある。埋め立てで海は遠くなって久しいけど、一番海よりの銭湯だ。江戸時代には既に町並みが形成されていた地域。同湯の歴史はつまびらかではないけど、昭和22年の航空写真では確認できる。かなり古くからの銭湯であることは間違いない。

今は、たくさんの黒煙を吐く油井型の煙突と、隣に新しく出来たマンションは2メートルも離れていない。双方ともに牽制しあう厳しい状況にある。

現在の妻入りのモルタル造の建物は昭和54年築。100メートルと離れていない隣の米の湯と同じ頃に改築されている。この2つの銭湯は煙突の構造などが酷似している。同じ業者の施工なのかも知れない。

通りが橋に向かってカーブするのに合わせて、片側だけが少し面取りされた感じのエントランス。脇から非水洗トイレの臭突が斜めに出て、いかにも田舎の銭湯という風情を醸し出している。

紺地に「湯」とだけある花王のシンプルな暖簾が風に揺れる。一段昇ってエントランスに入れば、正面に傘を立てて収納するロッカー式の傘入れ。左右には旧型のさくら錠の下足箱。昭和 54年築なのに旧型さくら。。。本当に小ぢんまりした靴脱ぎ場だ。

脱衣所へのサッシの扉を開ければ、木目プリント合板の前面がカーブした番台。これぞ漁師町の銭湯の大将という、還暦をとうに過ぎた感じのテキ屋的風貌の爺さんが座っている。

浦安の銭湯は350円。千葉県にあって、その上限価格420円よりもかなり安い料金設定になっている。

脱衣所の広さは幅3間、奥行4間。天井は格天井ではなく、縦の桟だけという意匠で、チープな新建材の天板が張られている。

外壁側には幅広の木製の濡れ縁が残っているものの、建物の側面に置かれたコインランドリーの壁があって、外とは遮断されている。その昔、この濡れ縁の直ぐ向こうには浦安の海があった。漁師たちは同湯裏の境川の舟溜まりに舟をもやい、当日は何度でも入浴できたという、このフラワー通りの銭湯で汗を流し、仕事で高ぶった神経をこの縁側からの眺望でクールダウンさせたはずだ。1971年補償金と引き換えに漁業権を放棄。海は埋め立てられて、今では浦安の広さが何倍にもなっている。

シンプルで明るく、そして清潔な脱衣所にはSakuraⅡ錠の島ロッカーが1つとメーカーが見付けられなかったアナログ体重計、浴室入口脇に大型の液晶テレビがあるくらい。

浴室は、幅3間、奥行4間。天井はグレーのプラ板が張られた2段型。島カランは1列で、カラン数はセンターから6・6・6・6。

タイル使いは、大半のものが白一色という郷愁漂う印象的なもの。床はイニシエの3センチ角。壁のほか、洗い湯を流す溝、カラン台の周り、浴槽の外縁なども、大きさは異なるもののみんな白のタイルが使われ、清潔に維持されている。

浴槽はシンプルな深浅2槽。深槽は緩やかな気泡が立ち昇るもので温度は意外に熱くなく42.5 度くらい。主浴槽はバイブラ、温度は42度強といったところか。内側の淡いブルーのタイルに茶色のミネラルの付着があるので井戸水だろう。それを薪で沸かしている。硬度の高い井戸水なのか、やや固さを感じるお湯だった。

ビジュアルは、男女境には湖の白鳥6羽を描いたモザイクタイル絵。奥壁には早川さんの「西伊豆（平成十五年八月二十三日）」。退色と剥離が進み、かなり無惨な姿で残っている。風呂屋人生というものに、諸々の複雑な思いを抱く大将は、「ペンキ絵師も死んでしまったし、もう描き変えられない」と話していた。勝手な想像だけど、強く潮時を意識していると感じた。

飲料の販売はなかった。

土曜日の18:50から19:30に滞在。相客は4、5人ほど。柔和な顔つきに戻った大将が、優しく見送る「ありがとうございまぁす。。。」という言葉が印象に残る。漁師町の風情を微かに残す郷愁銭湯だった。

上がりの一杯は創業60年以上というこの通りの「日の出寿司」。一番手前の末広湯に入りに着た時も、ここで寿司を頂いた。こんな寂れた通りで大丈夫なのかという感じの寿司屋だけど、値段は安く、寿司種もシャリもなかなかレベルが高い。小生、お気に入りの店だ。

女将さんが居ないので忙しかったからか、大将はどこか気が立っている感じだった。生ビールとそこそこ食べて2000円くらい。わが十条の「かわなみ」にはかなわないけど、旨い寿司が食える。。。

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ナカムラ　（Masayuki Nakamura）
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創業60余年、日乃出寿司
末広湯	米の湯