差出人: sento-freaks@googlegroups.com
送信日時:2019年12月28日土曜日 18:00
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件名:給田湯(世田谷区給田)

ナカムラです。 今日(12/21)は、「給田湯(世田谷区給田)」に行ってきました。
千歳烏山駅(京王線)から、0.4キロ、4分くらいです。

千歳烏山と八幡山で用事を済ませて、千歳烏山駅の近く、人だけが通ることのできる小さな踏切脇の旧松の湯に”ご挨拶”。相変わらずの郷愁の佇まい。以前2回ほどやってきた時には踏切際に右書きで「一夫地蔵菩薩」彫られた小さな石仏があることに気が付かなかった。いろんな歴史があるのだろう。

千歳烏山駅からも近く、やはり線路沿いにある以前から気になっていた給田湯に向かう。30年間くらい世田谷区に住んでいたけど、漠然と給田は調布市だと思っていた。

周囲が田圃ばかりだった昭和初期からお屋敷だった一角に、昭和40年代に建てられた銭湯のようだ。広い敷地にコンクリの独立煙突を有する、コンクリート造のかなり古そうな銭湯だ。

内部の写真を見ると船橋の宮前湯のように、コンクリ造の脱衣所に続く、浴舎部分が木造のようで気になっていた。結論から言えば躯体はすべてコンクリ造に見える。しかし、内部は伝統的木造銭湯そのものという銭湯だった。しかも、これほどに木造銭湯の内部を忠実に模している銭湯を見たことがない。

同湯の脱衣所には本格的な共同住宅がの乗っかっている。しかも、共同住宅部分が2フロア(実質4階の高さ)というのが、その時代の銭湯としては珍しいと思う。

ただ、相当に老朽化が進んでいる。建て替えを意識していのか、空き家なのかなって感じで、何処も明かりが点いていなかった。一方、土曜日の夕方につき店先には自転車や原付が何台も並んでいる。

ガラスブロック積みのエントランス。暖簾を潜れば正面に九谷・鈴榮堂の宝船のタイル絵がある。財物だけが描かれ、七福神などの人が描かれていない珍しい絵柄だ。ただし、上手い絵という訳ではない。

広いエントランスの左右に旧型さくら錠の下足箱が向い合せ。番台への扉を開ければ前面がカーブしたグレー木目プリント合板の番台に、シャンパー姿の末枯れた感じの大柄の大将が詰めている。今日はスタンプ帳はおろか風呂道具の準備もない。ポケットのフクスケの和手拭いで凌ぐことにして、風呂銭の470円だけを差し出す。

脱衣所の広さは3間四方。天板は木目プリント合板に置き換わっているものの天井は高く、水は張られていないけど濡れ縁を介しコンクリで庭池の設えもある。

ロッカーは島ロッカーが縦置きに1つと、外壁側にSakura3錠のもの。大黒柱はないけど、その位置にゼンマイで動く黒い振り子式の柱時計が掛けられ、昔ながらのボーン・ボーンと哀愁を帯びた時報を奏でている。

アナログ体重計はTANAKA。休肝日を設けて酒量を控えているため、心持ち体重が減ったかな。

浴室の広さは幅3間、奥行4間ほど。天井は木造の2段型天井を踏襲していて、ウィング部の梁がコンクリかなと思える以外は、木板張りにペンキ塗りなのなのか擬木のように木板を模しているのか分からなかった。

島カラン1列で、カラン数はセンターから5・5・5・5。床のタイルは6センチ角くらいのパール色で滑り止めの突起があるもの。すべてがピカピカに磨かれている。

浴槽は奥壁に沿って深浅2槽。深槽が座ジェット×2、浅槽が鉄格子の湯口があるものでバイブラ&ジェットになっている。同湯の第二の特徴はお湯の温さかも知れない。柔らかなお湯は41度強といったところで、出色の温さ。無料のスチームサウナも同様で、さすがにこっちは入った気がしない温さで早々に切り上げる。

暖冬にしては寒い日で身体は冷え切っている。手指が火傷するような感じがなく最初はいい。しかし、じっくり入れば問題は何もないけど、もう少しだけ高い方がいいかな。しかし、これは同湯のポリシーなんだと思う。

ビジュアルは奥壁に中島さんのセンター富士のペンキ絵。男女境にはローマ神殿のような絵柄の既製品のタイルが使われている。

土曜日の16:35から17:05に滞在。相客は10数人くらい。コンクリ造の銭湯にして、ペンキ絵やタイル絵を含め、これほどに伝統的木造銭湯を忠実に踏襲した銭湯を見たことがない。マニア目線では、かなり興味深い銭湯だった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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        旧松の湯。京王線の高架のための計画に掛っているらしい



                        一夫観音菩薩

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