差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2014年11月30日日曜日 7:28
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 松原湯(世田谷区松原)

ナカムラです。

今日(8/16)は、「松原湯(世田谷区松原)」に行ってきました。明大前駅(京王線)から、0.3キロ、3分くらいです。

月遅れのお盆。バスに乗って久し振りに実家へ行く。寿司を食べ、叔父が育てた尾花沢の西瓜をこれでもかという程食べ、お腹はたぽたぽ。帰路、下北沢を歩き、雨が降ってきたので代沢の小さな喫茶店に避難。フレンチプレスで淹れたインドネシアのコーヒーはちょっと独特過ぎる味だったかな。

地下化された旧下北沢駅の跡地に、大型のクライミングクレーンが立ち上がっていた。駅舎や線路のあった所には、大きな建物が建つようだ。

隣の駅前食品市場の解体は、遅々としながらも進んでいる。狭い一角だけど権利関係が複雑なんだろう。解体もパズルのピースを外すように、順次、かなり緩慢だ。

さて、松原湯。京王線と井の頭線が交差する明大前駅の下高井戸駅寄り。京王線路の傍らに油井型の煙突が立つ。

中島さんから毎年ペンキ絵を描き替える銭湯が3つあると聞いたことがある。五反田の不動前・松の湯と松原湯。最後の1つは思い出すことが出来ない。それ以来、同湯が気になっていた。

隣は教会。聖歌隊の練習だろうか、ステンドグラスの向こうから聞こえてくる賛美歌を聞きながら簡素なモルタルのエントランスを入る。

木札を横差しで使う松竹錠の下足箱。足下には新しい荒麻編みのマットが敷かれている。現在も供給されているようだ。これほど白いものは見たことがない。そして、浴室の出入口ではなく、エントランスでお目にかかるのは珍しいと思う。

待合室のようなクッションフロア敷きのロビーは、広くもないし居心地がいい感じではない。しかし、瓶牛乳は見あたらなかったもののビール類をはじめ2つの冷蔵庫には飲料がぎっしりと並べられている。客の入りは多いようだ。

脱衣所は、3間四方をベースに外壁側に1/3ほどの増築がある。天井は激渋の飴色ニス塗りの折上格天井。色は渋いが磨き抜かれ、美しい光沢を見せてくれている。

ロッカーは島ロッカーが縦置きに1つ。男女境側の扉が全て外され、棚のような使われ方をしている。さらに外壁側に松竹錠のロッカーが整然と並ぶ。

浴室の広さは、幅3間と1/3、奥行4間ほど。幅の1/3間は後からの増築のようだ。天井は未だ微かにペンキの匂いが香る木板張りの2段型の天井。島カランは1列で、カラン数はセンターから5・5・5・4。床のタイルは、足触りのいい厚手の6センチ角ほどのアイボリーのもの。一分のくすみもなく、何れもが瑞々しく輝いている。

夕飯の時間なので、この広い空間に小生のみ。開け放たれた窓から夏の風が通り過ぎて行く。銭湯で感じるこの風はとても好きなものだ。

浴槽は、奥壁に接した深浅2浴槽。主浴槽の浅槽は3点ジェット×1と気泡湯。深槽は座ジェット×2でキチンと冷却された水枕付き。お湯は井戸水を重油で沸かしたもので、双方の浴槽とも41度くらいと、夏としてもかなり温い。しかし、この夏の暑い日にも、ゆっくり浸かってけと、頑固そうな親爺の意思と思いやりを感じなくもない。

浴槽の縁に腰掛け呆けたように寛ぐ若者が居る。そういった使い方が出来る銭湯だ。

ビジュアルは、赤い薔薇か牡丹をワンポイントに使った淡いブルーのタイル。奥壁には中島さんの男女境を跨ぐ赤富士のペンキ絵。前景は海ではなく、山上から眺めた富士山前衛の山々を描いたもの。なかなかゆったりとした風景でいい。「ナカジマ」と「25.10.25.」の日付が記されていた。

京王線の線路脇で50年余り、ひたすら実直に湯を沸かし続ける伝統的木造銭湯。同湯の真骨頂は類い希な清潔さであろう。お湯を売るということ以外に余計な物が一切削ぎ落とされていて、そこに存在する極めてシンプルな物が徹底的に磨き込まれている。

不動前・松の湯も同様だった。しかし、松原湯の建物がより質素であるため、その一途さが際だっている。銭湯通ならばきっと心打たれることだろう。小生も、ただただ感銘を受けた。

土曜日の19:10から19:50に滞在。相客は5人ほど。相方の感想は「東京にもまだ有るじゃない」というもの。知らなかったいい銭湯に出会えて満足している様子だった。

上がりの一杯は、下北沢の「舶来屋」。つかさ兄ィに連れて行ってもらった店で、また訪れたいと思っていた。梯子かという位の急階段を昇る2階の小さな居酒屋。軒に紅白の提灯がぶら下がるというチープさを装っている。ジョッキのサワー類が一杯380円と確かに安いけど、料理やサービスの質は価値があり、決してチープな店ではない。

楽しみにしていた、カクテルのようにジョッキの縁に塩と胡椒を付けたトマトハイ(ナカは焼酎かウォッカを選ぶ)と伊那の地酒「井の頭」を頂く。諏訪と言えば、「真澄」よりも「麗人」が好き。その麗人の酒蔵で仕込まれた「下北沢」なる地酒も気になった。料理は刺盛りに始まり串カツ等々へ。期待裏切られず満足満足。

少し小澤征爾似の大将。メニューボードに「30年ありがとう」とあった。何と創業30年らしい。小生がこの町で表向きに飲み歩き始めた年数と一致している。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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                                     下北沢














                          下北沢・舶来屋















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