差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2014年5月17日土曜日 0:24
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 松の湯(世田谷区奥沢)

ナカムラです。

今日(4/26)は、「松の湯(世田谷区奥沢)」に行ってきました。 奥沢駅(東急多摩川線)から、0.2キロ、2分くらいです。

中野の千代の湯の近くで美味しい蕎麦を頂き、旧桃園川(暗渠)の畔の昭和23年築という古い民家 カフェ・momoGartenで珈琲一服。付近は桃園と呼ばれていて、店名はそれに因んでいる。素人の改 装ではなく建築屋が入っているようだ。いい雰囲気があって、今日は吹き抜ける風が心地良かった。 金曜日はBARタイムもあるらしい。付近は「木賃(アパート)ベルト地帯」で、千代の湯以外にも 銭湯が多い。是非、風呂上がりにビールを飲みに来ようと思う。

腹も朽ちたので今日のメイン、世田谷美術館に「桑原甲子雄の写真/トーキョー・スケッチ60年」 を見に出かける。

二十年前に桑原甲子雄と荒木経惟との競作「ラヴ・ユートーキョー」をやはり世田谷美術館で見た。 今回は桑原甲子雄の回顧写真展。二・二六事件直後の戒厳令下の東京を撮影した氏の代表作がかな り若い時代の作品ということに衝撃を受けた。さらに、その作品をセレクトしたのが、若き日の荒 木経惟だろうと推測されていることにも驚かされた。都写真美術館の企画展にも勝る大規模な写真 展だった。行ったり来たりしながら、気が付けば閉館30分前、優に2時間近くが経過していた。

風呂は奥沢と決めたら、相方が寄りたい所があるというので古い「田園マンション」に入る D&DEPARTMENTへ。時代に流されない洒落た雑貨や家具などを見て、1階のカフェで休憩した。古い マンションのロビーが喫茶スペースになっている面白い店だった。

さて、松の湯。ネットで見ると休業中だとか、ボヤを出したとかの情報があり、営業しているのか 確認できなかった。

世田谷美術館からバスで環状八号線を「浄水場前」まで。そこから1キロくらい。

駅前からの商店街を逆から入り北上して行くと駅近くの少し入った所に同湯はある。この辺りは、 東急の前身である田園都市株式会社が大正時代から住宅開発を進めたエリア。至近の奥沢駅だけで なく、田園調布駅からも近い。

時折黒煙を立ち昇らせる油井型の煙突を持つ、昭和中期の量産型の簡素なモルタルの大型銭湯。同 湯は昭和38年や昭和22年の航空写真でも確認することができる。昭和中期の量産型銭湯のようで もあり、古くからの建物にも見える部分もある。いったい何時の時代の建物がベースになっている のだろう。

玄関の暖簾を潜ると、正面番台裏に鈴榮堂の、福助の絵にしては珍しい、章仙の手によるタイル絵 がある。

下足箱のアルミ板鍵と脱衣所ロッカーのそれとが共用(同一)という初めて遭遇するシステム。全 国的にも極めて珍しいのではないだろうか。下足が入れ易かった「26番」は、脱衣所では最も使い 辛い最下段のロッカーだった。ご常連は恐らく使い易い番号を把握しているんだろう。

番台は高さがなくて両サイドの視界を極端に遮ったタイプ。相方が2人分の風呂銭900円を大将に 渡す。

脱衣所の広さは、幅3間半、奥行4間ほど。天井は元折上げ格天井を白いクロスで蓋をした感じの 天井。壁は木目プリントの新建材。昭和中期全開の典型的なチープな内装になっている。

くだんのロッカーは、島ロッカーが1つと外壁側にある。その他、Hokutowのアナログ体重計、ぶ ら下がり健康器、梁にはAsahiの業務用扇風機が2台並んで取り付けられている。

濡れ縁があって狭い庭があるものの植栽はかなり荒れた感じになっている。その濡れ縁を介して赴 くトイレも少し躊躇うくらい。

浴室の広さは、幅3間半、奥行4間ほど。天井は、白ペンキ塗りの木板の2段型で、アール部分が 少ない簡素な造りになっている。

島カランは1列で、カラン数はセンターから5・5・5・5・0・7。カラン周りは、台がえんじ色で、 側面がサワーピンクで大理石紋様のタイル。床は昭和後期くらいの6センチ角で、滑り止めの突起 が出ているグレーがかった白のもの。

浴槽は、奥壁に沿って深槽、円形の人間洗濯機、2穴ジェット&赤外線ランプ×2の主浴槽には炭を 詰めた金網の箱が沈められている。お湯は恐らく井戸水を沸かしたもの。やや熱い43度位だけど、 柔らかさもあって心地いいお湯だ。5つのジェットで渦を巻き起こす人間洗濯機。これに入るのは 久し振り。

奥壁は中島さんの富士山のペンキ絵。かなりヒビが入っているけど、日付を見ると25.2.26.。まだ 1年も経っていない。下地の関係か湿度の関係か、ペンキ絵には過酷な環境のようだ。

土曜日の20:50から21:40に滞在。相客は5、6人ほど。しゃがみ込んでロッカーの中に話しかけて いたり、上がっても雑誌で顔を隠したりしている妙な相客が居たりで少々落ち着かない面もあった けど、以前はたくさんあった簡素な大型銭湯が古いままで営業している。

こういった感じの銭湯がいつの間にか急速に減っている。懐かしさを感じるのも変だけど、そんな 感慨がこみ上げる。ただ、熱くたっぷりの浴槽のお湯と違って、シャワーやカランのお湯はいつま で経っても温く、限界と寂しさを感じた。

上がりの一杯は近くの「駅」という赤い看板の小さな焼き鳥系の居酒屋。串を頼むと、色々と付け 合わせが付く珍しい焼き鳥屋で、さっと飲むにはいい店だった。

*************************************************
ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
*************************************************








         何故、タイル絵は何処でもぞんざいに扱われているんだろう。(章仙画)




           さすが東急田園都市線沿線。こんな洒落たコインランドリーは見たことがない。




                         商店街の所々に古い建物が残っている。










目次へ