差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2011年1月13日木曜日 23:49
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 三晴湯(埼玉県川口市芝)

ナカムラです。

今日(1/8)は、「三晴湯(埼玉県川口市芝)」に行ってきました。 蕨駅(京浜東北線)から、1.3キロ、15分くらいです。

年末に裁断機とドキュメントスキャナーを導入。既にだいぶ減らした書籍をデジタル化し、書 棚の大幅圧縮を進めている。主に鉄道(廃線跡や駅)、建築・土木、遊廓跡、銭湯などが長年の 興味の対象。調べるための本として購入し目を通していない本も少なくない。そんな本を一気 に解体し自動でPDF化していく。

そこそこの解像度で200ページくらいの本を読み取っても、一冊3分くらいだろうか。紙の便 利さは捨て難いが、検索が可能になることや、大きい書棚が1つのネットワーク付きHDDに余 裕で収まる。生活空間がシンプルに広がるのは魅力的だし、やろうと思えば旅先からネットで バーチャルの「書棚」にアクセスすることも可能だ。

何冊の本を処理しただろうか。そんな作業に疲れたので、今年初めて赤羽・まるます家で夕ご 飯を食べることにして、その前に三晴湯に向かった。

蕨駅周辺にはいい銭湯が多い。芝銀座通りにある若松湯。そして、年末に廃業したいさみ湯を パトロールしながら、そこそこ寂しくなってきた辺りで同湯に到着する。

コンクリ煙突が聳える白い大型の銭湯。正面まで来れば千鳥破風と唐破風が重なる端正なファ ッサード。伝統的木造銭湯だ。

茶色を基調とした凝ったオリジナル暖簾を潜る。掃き清められた平格天井のエントランス。正 面に傘を差し入れる式の傘入れ。左右には松竹錠の下足がある。

アルミサッシの扉を入る。扇形の衝立と畳敷きの逆さ番台方式のフロントがあって、細身で眼 光鋭い親父が座っている。

脱衣所の広さは、幅3間強、奥行3間ほど。天井は折上格天井ながら、天板などはチープな材 料に置き替わっている。そして、中央には銀色に塗られた天井扇が1つ。

タイル張りの濡れ縁がある前庭。そこに面する部分に灰皿とベンチが置かれ、片側の島ロッカ ーで、浴室に近い方とは便宜的に仕切っている。

ロッカーはその他に外壁側にあるだけ。脱衣所の中央部分はニス塗りのピカピカの床が目立つ だけで何もない。

男女境は、木目プリント合板のが張られた背の高いものに更新されている。ロッカーは唖然と するほどに鍵がない。決して混雑しているからではない。全体の8割もの松竹錠アルミ板鍵が 失われている。使い易い高さのロッカーのほとんどが開かずのロッカーに成り下がり、そこに は「17、18、19番の鍵を返して下さい」などという張り紙がある。鍵の補充を完全に諦めたよ うだ。

脱衣所は、本当に潔いくらいにシンプルで、余計な物が一切ない。「あずま湯 本店」とある Keihokuのアナログ体重計と大黒柱の立派な黒時計(ゼンマイを巻いていないようだ)だけで、 冷蔵庫はおろか丸椅子すらない。。。

アナログ体重計に記されている「あずま湯 本店」は廃業銭湯なのだろうか。蕨駅の反対側に、 同湯と同じ建物の「あずま湯」がある。それは「支店」か・・・。

男女境に昭和54年の埼玉県浴場組合川口支部のプラスチック製の注意書きが残っている。同湯 は県内唯一と目される浴場組合非加盟の銭湯。かつては組合に加盟していたようだ。

今日は強烈に寒い。身体も冷え切っている。 さて、風呂だ。

浴室は、幅3間、奥行4間程度。2段型の天井は白一色のペンキ塗りで、その中に白い湯気が立 ち込める。脱衣所と同様にシンプルで清潔。立ちシャワーすらなく、銭湯のオリジナルとして の様式美すら感じる。

島カランは、幅の広いどっしりとしたものが1列で、カラン数はセンターか8・7・7・8。タイ ル類はすべて更新されて古いものはない。壁は腰高まで淡くパール色に輝く煉瓦大の白タイル。 カラン台は黒に赤で牡丹のデザインがあるもの。清潔さだけでなく端正な印象を受ける。

浴槽は直径2メートルはある渦を巻く円形浴槽と赤外線ランプ付のバイブラ主浴槽。いずれも 内側には厚手の紺色のタイルが使われたシックなものだ。湯温は42度強。薪焚きの井戸水を沸 かしたお湯が、バイブラでかき回されて湯気を立ちのぼらせている。

熱くはないけど温くもない丁度いい温度。さらに薪焚きのお湯。しかし、長く浸かっていても、 身体の冷めが早い感じがするお湯だった。外が強烈に寒いせいだけではないと思ったけど、ど うなんだろうか。

ビジュアルは奥壁に中島さんのペンキ絵。男湯は奥に山を望む静かな入り江を描いたもの。相 方に聞けば、女湯にも富士山ではなかったという。男女双方ともに富士山が描かれていないペ ンキ絵というのは珍しい。色合いも中島さんにしては濃い色使いで、湯気の向こうでも色彩を 主張する絵だった。

さらに、男女境にベージュを背景に茶とオレンジでエジプトの王侯貴族を描いた切り絵調のモ ザイクタイル絵がある。

男湯に冷蔵庫はない。女湯にはあるかと大将に聞いたが、やはり置いていないという。外には 古いタバコの自販機はあるものの、どこの銭湯にもある飲料の自販機はない。

あくまでシンプルさが際だつ銭湯だ。

土曜日の18:00から19:00に滞在。相客は8人程度。大将は最後に「いつまで続けられるんだ か・・・」と話されていた。

上がりの一杯は、今年の「まるます家」初め。相変わらず少し並ばないと入れない混雑。いつ もとシフトが変わったのか、混雑時に2つあるコの字型のカウンターをそれぞれ担当するベテ ランの2人がいなかった。勝手に”メグちゃん”と”よしみ”とあだ名して、漫才のような客 との掛け合いを楽しんでいたのに残念だ。

しかし、普段は2階に詰めている後進も、なかなか堂に入った客に対する突っ込みを見せてい た。まるます家の人材の厚さを垣間見せられる。そして、つみれ鍋、カキフライなどで、レモ ンサワーと熱燗1つを頂いた。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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