差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2009年5月20日水曜日 22:54
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 三島湯(青森県八戸市白銀町)

ナカムラです。

今日(5/5)は、「三島湯(青森県八戸市白銀町)」に行ってきました。 白銀駅(八戸線)から、0.2キロ、2分くらいです。

八戸港に面する陸奥湊駅の次の駅。近くに三島川、三島神社、三島サイダーなどがある。三島 は白銀町の字名で、屋号はそこに由来する。同湯はここで1日置きに湯を沸かす。16:30 から22:00までの営業。八戸では最も営業時間が短い銭湯かも知れない。

開店時間に合わせて時間調整して訪れる。しかし、暖簾が下がっていない。八戸銭湯の中で最 も気になっているのに、入れないのか・・・。呆然と立ちすくんでいると、女将がやって来た。 大抵は16:30くらいに店を開けるという。電話では16:00と聞いていたのだけれど、 まぁ大した話ではない。

奥にパイプ煙突があることで銭湯と判る。2階に木製窓枠の窓が並ぶ古い日本家屋だ。その1 階にアルミサッシの入口があって、紺地に屋号を太い字で染め抜いた堂々とした暖簾が掲げら れた。少しの色褪せもなく最近に作られた感じのもの。暖簾はやはり銭湯の顔だ。同湯の暖簾 には、風情、気品、緊張感がある。

やはり入口は寒冷地ゆえの二重構造。サッシの入口戸を開ければ、番台裏に、岩礁に帆掛け舟 が揺らぐ絵柄のタイル絵と、その左右ハの字型に男・女湯への扉がある。そして上を見れば、 昭和2年の営業許可証が額装されている。現在の建物は、昭和30年代のものらしいけど、創 業は昭和2年に遡る。同湯は80余年もの長い歴史を有す。

ハの字型の戸を入ればコンクリのタタキ。下足棚があるだけで下足箱はない。番台は北国特有 のもので、まさに「台」の上に小さな炬燵が乗せられている。初めて遭遇するタイプだ。

女将が釣り銭を持ってきて営業開始。420円。横浜などの銭湯では、開店前から近所のご老 人を中心に一番風呂を目当てに並ぶ光景があるけど、営業が1日置きだからか、あるいは16: 00開店と当地ではかなり遅い時間の開店だからか、そういった一番風呂勢が居ないのが不思 議だ。

脱衣所の広さは、幅2間強で、奥行はコンクリのタタキ部分を入れて3間ほど。2階が載って いるので天井はさほど高くないが、立派な平格天井になっている。そして、床の材料が秀逸。 足触りがいい。最も優れているのが、すべてが清潔に磨き込まれていることだ。切り盛りする 女将の誠実さが反映している。

外壁側にご常連の棚があるだけでロッカーはない。脱衣は籠に入れるのが作法のようだ。その 他、「北東衡機製作所」と漢字表記のとっしりとした古いアナログ体重計がある。よくみる HOKUTOWのかなり古いバージョンのようだ。

しかし、本当にレトロだけど磨き込まれている。優れた銭湯だ。

さて浴室。広さは幅2間強、奥行3間半。天井は四角錘型でさらに四角錘の湯気抜きがある。 島カランはなく、ガラスブロック積みの男女境と外壁側に7機ずつのカランがある。

浴槽は、奥壁に接するように深浅2層。真中の境に焚出し口があって、2つの浴槽に湯を注ぎ 込んでいる。同湯では井戸水をA重油で沸かしている。小生が口開けということもあるけど、 やや柔らさに欠ける嫌いがある。

基本的にタイル類は更新されている。しかし、半分掘り込まれて設置の浴槽の縁や、脱衣所か ら浴室への踏み出し部分が特徴的な半円状になっていて、その舞台のような部分に古い小石型 タイルが残っていた。

そして、奥壁にはモザイクタイル絵が青いタイルに縁取られて額縁に入った絵画のようにある。 絵柄は、島のお堂に海、舟という絵柄。岡倉天心が愛した五浦海岸の六角堂なのか、近江八景 の浮見堂なのか、そんな絵柄だった。

脱衣所だけでなく、浴室の清掃にも隙がない。写真集『銭湯遺産』を持っている陸奥湊・松竹湯の女将さんも素敵な銭湯だと話してくれた白銀の「三島湯」。隔日営業と入りにくいけど、銭 湯王国でもある八戸の名銭湯といっていい。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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