差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2011年2月23日水曜日 22:45
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 西の湯(呉市倉橋町室尾)

ナカムラです。

今日(2/7)は、「西の湯(呉市倉橋町室尾)」に行ってきました。 呉駅(呉線)から、30キロ、バスを乗り継いで90分くらいです。

呉駅発の市営バス・桂浜温泉館行は、海沿いの自衛隊関連の施設、戦艦大和を建造した旧海軍 工廠のドッグ(現IHIマリンユナイテッド)、日新製鋼の高炉などの横を通り、音戸大橋で倉橋 島に渡る。郵便切手にもなった音戸大橋も片側1車線で老朽化が進んでいる。キャパの問題か、 隣に大きな橋が建設中だった。

橋で渡った倉橋島は、戦後直ぐには22千人もの人口があったが今はのその1/3。急速に過疎化 が進んでいる。西の湯のある室尾も通学時の例外を除いて、昨年の10月、市営バスに切り捨て られた。

5年振りに室尾に着いて驚いた。前回も空家が多かったが、更地が多くなっている。そして、 この小さな集落に明らかに不釣り合いな平屋で新しい老人ホームが数棟があって、さらに建設 途中の棟もある。

古いホーロー看板が印象的だったよろず屋は、おばあさんが亡くなったということで廃業して いたし、一軒だけあった食堂に暖簾は下がっていなかった。残っていたのは、酒蔵、酒屋、喫 茶店、理髪店、郵便局、ラムネ屋、鮮魚店と食料品店が2軒くらい。

ある地元の人は、突出して老人ホームが目立つ光景を「姥捨て山」と表現していた。入所する 人数の割に面会の人は少ないという。天気は良かったが、5年前の印象とは全く異なる状況に 少々滅入るものを感じた。地方の疲弊と、若者の流出。日本の急速な高齢化を先取りした姿が 室尾にあった。

室尾には元々3軒の銭湯があった。この前に入った「東の湯(桜湯)」は、釜場の火の粉が薪に 燃え移って火事になり、廃業していた。ただ、左半分が母屋という見事な建物と、煉瓦積みの 煙突の何故か基部だけが残されていた。

さて、身体と、それよりも心が寒々しくなり、湯に浸かりたくなってきた。西の湯は、昭和15 年築、煉瓦煙突を有する木造銭湯。87歳になる女将さんと一見無愛想な息子さんが湯を沸かし ている。

風呂銭は200円。この前来た時より50円値上がりしているけど、小生が知っている銭湯の中で 最も安い値段だ。

日曜日が定休で、営業時間は16:00から19:00くらい。かなり短い営業になっている。番台に 人が居ないことも多く、客は小銭を番台に置いて、入る時には自ら浴槽の木板の蓋を開け、出 る時にはまた自分で蓋を閉める。これが同湯の作法になっている。

靴棚に靴を入れ、何十年も前から今と変わらなかっただろう脱衣所に上がる。年季の入った板 の間と押縁天井の小さな空間。男女境の大きな鏡とKing錠のオール木製ロッカーと脱衣籠。漁 船に泊まった漁師が使う2槽式の洗濯機。壁に掛けられた大きな盥は、昔、手洗いの洗濯に使 ったものだろう。こんな古風な面々が並ぶ。

浴室は、御影石敷きで、やはり黒御影石の石組の浴槽がある。周囲の10センチ角のタイルには 黴の浸潤が進み、それぞれに深緑色の斑模様がある。薄暗い浴室。冷静に見ればかなりの光景 だ。

漁師町の銭湯では、熱い湯で本当に短時間で入浴を済ますというスタイルに接する。ただ、同 湯はカランのお湯はほぼ熱湯だったものの、バスクリンが投じられた浴槽のお湯は42度くらい と、普通の温度だった。

山からの水と井戸水のブレンドという天然水を薪で沸かしている。循環設備はないようだ。時 折、熱いお湯が注がれてくる。

月曜日の16:35から17:15に滞在。相客は3人。相客と一緒に風呂の蓋を閉めて上がった。

ここに来たもう一つのお目当ては「北吉鮮魚店」での一杯。しかし、月曜日が定休日らしく空 振り。。。

呉駅へは、有限会社倉橋交通という地域バスで桂浜温泉館まで戻り、そこで市営バスに乗り換 えなければならない。日が暮れてから、海風が吹きすさぶバス停で、50分もの乗り継ぎ時間が ある。市営の温浴施設である桂浜温泉館が営業していれば、ビールにもありつけ、あるいはも うひとっ風呂という選択も可能だったけど、こちらも月曜日が定休日。

湯上がり。夕暮れの屋外での乗り継ぎはあまりに寒すぎる。絶望的・・・。そして、どうした ものかと思案していたら、温浴施設はやっていなかったものの、隣にある図書館が20:00まで 開館していた。

本当に助かった。。。そして、旧「倉橋町史」で、昔の倉橋島の様子を眺めていた・・・。

《前回訪問:2006.09.12.》

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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旧桜湯(東の湯)《前回訪問:2006.09.12.》