差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2013年7月7日日曜日 17:18
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 扇湯(淡路市岩屋)

ナカムラです。

今日(6/15)は、「扇湯(淡路市岩屋)」に行ってきました。 岩屋ポート(ジェノバライン)から、0.5キロ、6分くらいです。

早朝6:30の新幹線で20数年振りの神戸へ。先ず、六甲のフクギドウという器屋で若い伸び盛りの 作家の木のトレイを購入。たまたま六甲駅至近、阪急神戸線の傍らに”準天然温泉/ふじ温泉”なる 油井型の煙突を持つ銭湯を発見。Twitterで写真をアップしたら、あの”関西の激渋銭湯”のまっ ちゃんから”俺のホーム銭湯”との書き込みをもらう。ここ10年の通信技術の進化に驚く。。。

今日の銭湯は、明石の遊所跡、魚市場、明石漁港の明月湯を散策した跡、船で淡路島に渡り、岩屋 温泉の扇湯に行く計画。

明石遊廓は、高層マンションに囲まれながら、手入れが行き届いた旧妓楼が残っていた。桜町は、 カフェー調の建物は更地になり、その他の建物もだいぶ減った感じがした。

魚の市場(魚の棚)は、早朝に通ったことがあるけど、こんなに栄えている市場だとは知らなかっ た。店先の鯛が跳ねて棚から落ちそうになったりしている。強烈な雨を宿るためによし川で玉子焼 (明石焼)なんぞを頂く。密かに日本酒に合うと考えているけど、厳しい天候での先行きを考えて 我慢した。

港町、岬町など風情ある町名が残る明石漁港。そこに残る明月湯は”またいずれ・・・”と思わず にはいられない銭湯だった。

さて、4年半ぶりの淡路島北端の岩屋。明石フェリー(たこフェリー)が廃止され、ジェノバライ ンという高速船で13分くらい。

扇湯は、岩屋港から南下する旧道(岩屋商店街)に面している。さほど長くないこの旧道の沿道に は、同湯併設(廃業)を含め喫茶店が驚くほど密集している。朝4時台に出港する播淡連絡汽船で、 島の魚を本土まで担いで売りに行った、かあちゃん達の待機場所だったらしい。

建物は昭和初期築と推測される洋風看板建築。脱衣所棟のファッサードやアーチ型の入口を持つキ ュービック調のエントランスには洋館風の装飾が施されている。昔は前栽があったのだろうか、男 湯については廃業喫茶店になっている。

暖簾は2房の関西風のものが下がる。中に入れば、床も上がりかまちもタイル張り。正面には九谷 の銘がある絵付けのタイル絵。左右にはおしどり錠の下足箱が向かい合わせに並んでいる。向かっ て右手の女湯にだけ扇形に”女”と記された表示がある。

やや蒸し暑い雨振り。番台への扉は開放されている。番台は木組みながら側面には昭和中期的な木 目プリント合板。相方が2人分の風呂銭760円を渡す。淡路市の料金だろうか、兵庫県の料金と比 べ幾分か安い。

番台の反対側にタイル張りの大きな箱がある。木板で蓋をされ今は使われていないけど、昔の傘入 れらしい。番傘が多かったのだろうか、今の細い洋傘ならば優に100本ほどの傘を収納することが 出来そうだ。

脱衣所の広さは、幅3間、奥行4ほど。天井は、松本・塩井の湯越前大野・改盛湯と同様に、ブ リキ板を洋風の模様にプレスした天井材が使われ、シーリングメダリオンまである本格派。それな のに、周囲は和風の欄間のような意匠が施されている。床は絨毯敷き。

ロッカーは、外壁側におしどり錠と折鶴錠の混成。四角の籐編みの脱衣かごも現役。番台の上には” Meiji”とある黒縁の丸時計が今も時を刻む。その他、メーカーが分からなかった古いアナログ体重 計、旧型マッサージ機が2台ほど。

浴室の広さは、やはり幅3間、奥行4間ほど。天井は、プラ板張りの四角錘で、中央に湯気抜きが あいている。ただ、外壁側に張り出しがあって、”岩屋温泉”が満たされている副浴槽とカラン3機 の洗い場がある。

島カランはなく、張り出し部分以外には男女境に3機のカランがあるだけ。同湯では、カランを使 うよりも、主浴槽から汲み湯で頭や身体を洗うのが主流のようだ。

この主浴槽の造りが珍しい。中央奥に斜めに置かれた卵形の浴槽のまわりに、掘り炬燵のように足 を下ろす部分を空けて、腰掛けられる段が巡らせてある。正面から湯を汲めるこの形は、浴槽に背 を向けて座る多くのセンター浴槽からの発展型のようにも思える。

主浴槽のお湯は、井戸水をA重油で沸かしたすっきりとした白湯。島の銭湯だけど湯温は42.5度く らい。熱い湯ではなかった。

周囲の壁のタイルは中判の古い白タイル。黴が浸潤するという古豪特有の”景観”がやはり同湯に もある。

ビジュアルは、奥壁にはタイル絵があるものの、色褪せ、微かに橋が描かれているのが判読できる のみ。周囲の白タイルと同化し、最初は気がつかなかった。絵の回りに縁や境といったものが見当 たらない不思議なものだった。

大雨の土曜日の17:15から18:15に滞在。相客は5人ほど。播州地方の一部に残るという独特の汲 み湯槽の流れを引き継ぐ、希な浴槽を持つ独特の銭湯だった。それにしても、フェリーが廃止され、 明石大橋経由の路線バスも廃止された岩屋。雨降りで高齢化した住民が表に出ていないということ もあって、ひときわ寂しい街に見えた。

帰路のジェノバラインは漁船のように小さな船で立っていられないほど揺れた。でも、海上の夕焼 け空には久し振りに見る虹が架かっていた。

上がりの一杯は、相方の見立てで、繁華街からは外れた旧フェリー埠頭に近い”酒好屋・ひらじい” という地魚系酒場へ。大将は明石にやってきて10年になるという28歳のスキンヘッドの青年。開 店4年目になるらしいけど、いくつかある小上がりは全て満席。まだ発展途上だけど、工夫した独 自の料理が並んでいて、好感が持てた。メニューには、”お飲物””食べ物”とあった。本来ならば” お料理”だろうけど、そんなことはどうでもいい。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp  
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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                       扇湯はこの岩屋商店街の中程にあたる位置にある。




                    扇湯が見える至近の距離。右手の空地にも、銭湯があった。




                        岩屋は川の両岸の集落。強雨で川は増水していた。














        明石大橋。ここを通り岩屋にやって来る路線バスがあったけど、廃止されたようだ。明石フェリーも廃止。
        地元の学生は高速船使って本土との間を往復している。



                                   岩屋ポート




                              復路の高速船は漁船のように小さく、揺れた。




                                    明石港

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