神明湯（横浜市保土ヶ谷区神戸町）

差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2004年5月1日土曜日 11:38
宛先: 銭湯ＭＬ
件名: 神明湯（横浜市保土ヶ谷区神戸町）

ナカムラです。

今日（4/30）は、「神明湯（横浜市保土ヶ谷区神戸町）」に行ってきました。
保土ヶ谷駅（ＪＲ横須賀線）から０．８キロ、１０分程度。神明社の向いの露地の奥にあります。

八重洲の「魚がし寿司」という立ち喰いで夕飯をかき込み目的地へ。もう変な顔はされなくなったけど、滞在時間の短い客のランキングでは、上位に位置すると思う。もっとっも、寿司屋に長居するのは粋じゃない。

東海道線で横浜駅までは、主目的地を「中乃湯(西区藤棚町)」としてたけど、バスが１時間に２本しかなく時間も開いていたので断念。横須賀線に戻り、保土ヶ谷駅から近く、道もフラットな神明湯へ目的地へ変更。

由緒ある大きな神社の「神明社」の向い。「八珍」という、かなり小さな中華屋の露地を入ると同湯はあります。一度、明るい時に来ているので難なく到着したけど、知らないと訪れにくいかも知れない。

入口は、むくり破破風の黒瓦。昭和中期的なモルタル造の脱衣所棟の上にも、むくり破風的な三角。暗くてよく判らないけど、その上も瓦かな。煙突は油井型。心持ち細い気がする。

暖簾の上には「神明湯」という立派な扁額が掛かっている。横山大観の弟子の鎌倉の「観明」という絵描きの揮毫を、大木の輪切りに彫り込んでいる。なかなか立派である。

暖簾をくぐると台形の三和土。番台裏面にタイル絵等の装飾は無かった（貼り紙の裏はわからないが・・・）。下足箱はちどり錠。アルミサッシの戸を通って番台。都会（？）の銭湯にしては、けっこう低い感じがする。８０歳の女将が座っている。茶色の簡素な木組。側面の板は補修され白い化粧板が張られているが、かなりミス・マッチである。

脱衣所は幅３間、奥行３間。板の間には島ロッカー（１０個）、ヤマトのアナログ体重計、ベンチとテーブルという、必要最小限のものしかないので、開放感のあるスペースがある。

ロッカーの錠は、島ロッカーが「ＳａｋｕｒａⅢ」のシリンダ錠。外壁側のロッカー（２４個）が古くからあるようで、おしどりの板鍵になっている。外壁側のロッカーの、昔は脱衣籠を片付けていただろう場所に、ビニールにつつまれた家庭用の扇風機が５、６台乗っていた。このスペースで何かやっているのか・・・。

天井は、昭和中期的な茶色の模様の長方形の合板（０．５間×１間）を縦横に組んで、変則的な格天井風としている。格子は細く、重厚感はないけど、茶色の柱、梁、そして窓枠やガラス戸の建具も旧来の木製で、それらとマッチした一体感がある。改装時にも主人が、木製の建具にこだわったらしい。同感。

浴室への入口は、こだわりきれず、新しい茶色のアルミサッシ。広さは幅３間、奥行３間半。中型の銭湯ながら、ゆったりとした感じがある。

天井は２段型で、ウィング部が幅２間と広く全体的に均等な緩いカーブ。この銭湯の天井の穏やかな雰囲気を演出している。昨年の１０月２４日に塗り替えたとのことで、ペンキの匂いはしないまでも、全面がオフホワイトで少しのくすみもない。

１３年前に浴槽、カラン周りを一旦壊して再構築したとのことで古いものはない。同湯の外観からの印象（＝期待）裏切るもので、ボロ銭指向の小生としては肩すかしの感があるけど、清掃が行き届きいい銭湯と思う。

島カランは１つで、カラン数はセンターから４・４・４・６。全てにＷａｇｕｒｉの茶色のシャワーが付いている。そして、センターに立ちシャワーブースが２つ。カランはＷａｇｕｒｉの茶色の５角形の取っ手のもの。カラン周りは肌色の大理石模様の、床は緑がかったパールの輝きのあるタイルが張られている。

浴槽は深浅２槽。外壁側の深湯が薬湯でバイブラバス。浅槽がパイプで仕切られていて、赤外線ランプ付で浅い部分と、７点座ジェット×２となっている。温度は４３度かもう少し高いくらい。

ビジュアルは、平成１５．１１．３に描かれたばかりの早川師の「精進湖」。正面に立派な富士山と精進湖に映る逆さ富士が描かれている。昔は、入口の扁額を書いた、鎌倉の観明という人が背景画を描いていたとのこと。絵描きで背景画を専門としているわけではないので、何日もかけて描いていたらしい。

戦前から続く明神社前の銭湯。現在の建物は昭和４０年築。外観と脱衣所は昭和中期的な趣だけど、浴室は新しく清潔だった。

２２：３０に閉店。そういえば、銭湯の閉店に立ち会ったのは図らずも初めて。浴室の電気が落ちて、すぐに掃除のおじさんがクレンザーのようなものを撒きはじめ、大きなでっきブラシでゴシゴシ始めた。あれよと思っていると、脱衣所の電気も落ちて、自動的に女将に入口に押し出され、入口も押し出され、戸を閉められて鍵かけられた。談笑しながらで、少しの嫌味もなく、でも定時閉錠。うーん、おみごとという、熟練の閉店振りだった。２２：００以降、客は小生のみ。ビールの飲みながら、ソファで瞑想したかったが・・・。

脱衣所に立川談志の「銭湯は裏切らない。神明湯ですぞ。」と木の板に墨書したものがあった。
湯は人を裏切らない。そして、数多の人を救ってきたと思う。いい言葉だ。

（出所）横浜市浴場組合ＨＰより。

保土ケ谷区神戸町（ごうどちょう）［昭和15年11月１日設置］

町名の由来
　昭和15年に神戸上町の一部から新設された町です。

古くは保土ケ谷宿の内で、上神戸町、下神戸町といい、明治22年の市町村制施行の際、橘樹郡(たちばなぐん)保土ケ谷町大字上神戸、下神戸となり、昭和２年４月１日に横浜市に編入して神戸町となりました。昭和２年10月１日の町界町名地番整理事業の施行に伴い、神戸町を廃止し、神戸町小字坂ノ下、町並、横町、藤ケ谷、向原、市ケ原、岩ケ谷、藤塚、北田、北谷、田向の町区域に神戸上町を、小字広町、芝ケ谷、宿後の町区域に神戸下町を設けました。

武内廣吉氏は、久良岐郡(くらきぐん)の「郡家(ごおか)」が「郷戸(ごうど)」となり、保安３年（1122）、保土ケ谷に伊勢神宮の御厨(みくりや)が設けられて、神戸(かんべ)がこの地に設けられたので、神戸の地名が生まれたが、「ごうど」と呼び慣わしていたのが今日に及んだと考えています。『新篇武蔵風土記稿』に「古神田なるにより、神戸の地名おこりしなるべし」の記録があります。

柳田國男は『地名の研究』の「地名と歴史」に「ゴウドという地名は古い。美濃の川渡(ごうど)などは大往還の駅であって、すでに『太平記』以前から知られている。尾張・三河のものはすべてが官道の上にあるわけでもないが、その数が非常に多く、文字も強戸・郷戸・神戸・顔戸などとでたらめな字が使ってある。正しくは川処とでも書けばよいのであろう」と述べています。

町内に横浜市保土ケ谷スポーツセンター、神明社、ビール坂（大日本ビール保土ケ谷工場跡）があります。「はんがや」が「ほどがや」の由来ともいいます。また、横浜ビジネスパークとして整備され高層ビルが建ち並んでいます。

「横浜の町名」（横浜市市民局）より