差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2004年12月25日土曜日 15:12
宛先: 銭湯ML
件名: 白川温泉(京都市左京区北白川別当町)

ナカムラです。

今日(12/20)は、「白川温泉(京都市左京区北白川別当町)」に行ってきました。

「京都極楽銭湯案内(淡交社)」が発売されたという銭湯ML情報を見た瞬間、有燐堂に電話で在庫を確認、取り置きを要請した。
そして、ホテルを予約して・・・。

先ずは、旧橋本遊郭(京都府八幡市)に赴き、遊郭跡の撮影。
同著によれば、昭和12年には80軒以上の廓に700人以上の娼妓がいたらしい。

老人が多い静かな街。既に、風化が進んでいる。
25年前の写真集、石内都の「連夜の街」で見た、お目当てのステンドグラスは発見できなかった。
四半世紀の時の流れは重い。

休業日だったのは判っていたけど、橋本湯に赴く。
入口屋根のてっぺんにある屋号入りの黒瓦は凄い豪華。
そう、旧遊郭建物の入口屋根の上には、瓦材で作られら人形が乗っている建物が数軒ある。

華麗に旧型カメラを扱う、年配の女性とすれ違った。
素人ではないな。

さて、遊郭探訪を終え、出町柳駅(京阪電鉄)まで北上、市バス3系統に乗り換え、「白川別当町」で下車。
交差点に出ると、すぐに油井型の煙突と、塗装されていない茶黒い木造銭湯が現れる。
銭湯と知らなければ、酒または醤油の古い醸造所といった趣がある。

正面に回ると、洋風のファッサードを持つ稀有な外観。思わず息を飲む。
「SENTO 廿世紀銭湯写真集」にも登場しているらしい。

(注)誰か、この写真集を譲ってくれる方いませんか?
   切に希望・・・。連絡請う。。。

昭和2年築の銭湯とのこと。
浴室は、前の経営者が昭和30年代くらいに中普請を行っているけど、脱衣所はオリジナルとのこと。

暖簾をくぐり、戸を開けると、いきなり脱衣所。
構造はシンプルだけど、横須賀銭湯のように狭くはない。

コンクリのタタキの広さが、印象的。
木組みの番台。古色蒼然とした下足箱(King錠)、古い木製ロッカー(King錠、一部はまさに真鍮の鍵がついている)等々。再び息を飲む。

脱衣所の広さは、幅3間、奥行3間。
この他、浴室との間に奥行き1間の緩衝スペースがあり、旧型マッサージ機、タイル張りの流し、ベンチなどがある。
桶と椅子も浴室ではなく、ここに置かれた棚に並んでいる。

脱衣所の天井は、吟味された材による格天井。黒と焦げ茶の中間という深い色あい。
中心の照明器吊り下げ部に漆喰による洋風の装飾があり、和洋折衷。
2階は立派だけど物置になってるらしい。
しかし、L字型へ曲がって2階へ上がる階段の設え方は、なかなかのセンスと見る。

さらに、窓へ通じる部分がアーチで処理されたり、トイレの戸も簡素ながら洋風なデザイン。
その他、部分的ながら華麗なナジョリカタイル、石田式のアナログ体重計、木製の身長計測器、地場飲料の冷蔵庫と、細部の見所は尽きない。

浴室は、幅3間、奥行3間半。
男女境の中心部に接して、センター側から深槽、浅槽と張り出している。
その上、プラ板を張った四角錘型の天井に、正方形の湯気抜きがある。
上部に窓かな、そんなもの見える。

奥壁には小さな備長炭を沈めた副浴槽がある。
この浴槽のみ内側が、小さな玉タイルと蟹や貝をあしらったタイルが使われている。
初めて見るなぁ。

浴槽の縁の厚みは、東京や横浜の銭湯の2/3位しかない。
水平ではないし、座ることができない。
温度は、深浅2槽とも43度くらい。副浴槽は41度くらい。

主浴槽を囲むように洗い湯を流す溝が切ってある。

カランは、外壁側に9、その両サイドに4ずつ。
レバー型のものだったけど、取っ手にはトレードマークはなかった。

16:00の一番湯から17:00まで滞在。
サウナなし、ジェットなし、薬湯なしと、極めてシンプルな銭湯。
雨が降り出してきた。相客は2人しか居なかった。

主人は石川県出身の方。
昭和40年に同湯を引き継ぎ、「千代の湯(廃業)」とあわせ2軒の銭湯経営とアパート経営をされてきた。
近くに「十文字湯」や「白川湯」という名の銭湯もあったらしい。

釜の寿命は8年くらいらしい。
今の釜は、あと2年で更新の時期。
言葉には出さなかったが、そろそろ潮時と考えてると感じた。

京都大学が近い。
帰りは、近くの学生食堂で熱燗とすき焼き定食。
京大の学生たちは精悍な顔つきをしていると感じた。

その後、久し振りに四条河原町付近の繁華街を散歩した。
新京極。15歳の時、ここで買った湯呑みを今でも使ってるけど、土産物屋が淘汰され普通の繁華街になっている。
桜湯というビル銭湯があった。



ロッカーに隠れてるけど、華麗なマジョリカタイルがある。
写真は別として、実物では、マイ・ベストワン。
石田製のアナログ体重計。京都では、圧倒的に石田製が多いとのこと。






レトロな「便所」の入口。
戸を開けて、天気が雨に変わっていることを知った。



シンプルな浴室だけど、落ち着ける空間だった。
相客は椅子を用いず、タイルにじかに座っていた。小生も。




裏からの姿。造り酒屋や醤油の醸造所という感じ。
表と違って、純和風の造り。
主人は、立派な2階ではなく、釜の近くで寝起きしていると。
恐らく、火元の近くで監視するという意味合いがあるのかなと感じた。