差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2011年2月18日金曜日 23:49
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 橘湯(倉敷市川西町)

ナカムラです。

今日(2/5)は、「橘湯(倉敷市川西町)」に行ってきました。 倉敷駅(山陽本線)から、0.6キロ、6分くらいです。

金曜日に早めに会社をズラかって、新幹線で夜遅くに倉敷に入った。

宿は昨冬に続いて、ドーミーイン倉敷《天然温泉・阿智の湯》。ドーミーインは、ホテル併設の 浴室を売りにしていて、最近はそのノウハウでスーパー銭湯などもプロデュースしている。倉 敷のホテルにも、大きくはないもののかなり練れている「和」の雰囲気の温泉がある。野草を 押し花風に張り付けた行灯の明かりが暖かさを演出している。やりすぎの嫌いがないではない ものの筝曲が流れているのも悪くない。

「阿智」とはホテルがある倉敷の町名だけど、露天風呂などから黒瓦の阿智町をはじめとする 倉敷の家並みが、眼下に見渡せる。温泉は、そんな町中で汲み上げられた冷鉱泉。塩分を含み、 温浴槽は黒湯系のいい匂いがする。

しかし、源泉水風呂が微かなドブ臭があることに驚いた。銭湯の水風呂ではよくあるけど、管 理されているだろう温泉を売りにした新鋭ホテルで、そんな臭いと遭遇することに驚いた。

それと、部屋の空調を切っても室温は28度くらいのまま。あまりに暑すぎる。ホテルの人に訴 えても為すすべがない様子。言われるまま真冬なのに窓を細目に開けて寝たら、ここ1年で初 めての風邪を引いてしまった。ここに2泊連泊したけど、ドーミーインの評価はガタ落ちとな る。

翌朝、鼻をすすりながら先ずは玉島散策。新倉敷駅から玉島中央の「港湯」に向かう。何と「諸般の都合により閉店します」との貼り紙がある。併せて、隣湯の「旭湯」の地図が貼ってあっ た。本邦最高グレードと言っていい看板建築の銭湯。今後、この秀逸な看板建築はどうなるの だろうか。

遊所跡散策面では、港湯隣の羽黒神社の参道脇に残る「風俗営業(料理店)」の古い鑑札を付け た、怪しげな空家が気になった。

そして、白壁の建物群が連なる仲買町へ。今でも清酒「燦々」の酒蔵や、住友肥料の古い看板 を掲げる商家跡が残る。そこで相方が「柳湯」を発見。廃業して5年くらいになるようだ。同 湯の方に話を聞いたら、少なくとも大正時代末頃の建物らしい。凄い町だ。

さらに、柏島の旧天満町遊廓を散策。岡山県で最も古い紡績工場(旧玉島紡績)を引継いだノ コギリ屋根の山陽紡績の大きな工場が有ったけど、広大な更地になっていた。

すぐ近く乙島に「旭湯」がある。隣家が改築されたようで、私道に面した同湯入口との間に架 かっていた雨避けが撤去され、ファッサードのモルタルも綺麗に塗り直されていた。しかし、 よく見れば、悪水路の石垣の上に建つ土管煙突の古い銭湯だ。ここに来るのは2度目。この銭 湯に入る機会は来るのだろうか。。。

※数日後に、Mixiのコミュニティで、旭湯は手持ちの燃料が尽きたら廃業予定との情報に接す る。女将さんの見立てでは2月末まで燃料は持たないだろうと。(入る機会は来なかった。。。)

銀座通り、通町、清心町。これら廃墟建物も混じる古いアーケードを探索して玉島を後にした。。。

前段が長くなった。そろそろ倉敷・川西町の旧遊廓街の端に位置する橘湯に向かおう。

大正12、13年頃の築の古い映画館のような洋風のファッサードを有する銭湯。戦後直ぐから数 年前までは同湯の後方で「橘旅館」を併設していた。初めて倉敷を訪れた時に、常連しか受け 入れていないということで断られたことがある。5段あったという煙突は、壊れてきたために2 段ほどまで解体され、表の通りからは見えない。

暖簾を潜れば、ある程度整備された外観とは違い古色蒼然とした靴脱ぎ空間と指物師が手がけ たようなオール木製の下足箱がある。そして、2階に上る階段へのドア。番台の背にあたる部 分は少し手前にせり出していて、桟には多少の意匠が施されている。

番台への扉を開ければ、下部に空間がある脚のある古い番台で、上には裸電球が1つ下がって いる。期待以上の郷愁空間。ここまででかなり心臓の鼓動が高まっている。

脱衣所の広さは幅2間、奥行3間ほど。天井は押縁の天井。2階があるので高さはない。男女境 は、天井まで漆喰の壁があって、分離度が高い構造になっている。ただ、漆喰の壁にお盆大で 満月が少し欠けたような形の孔が開けられている。換気なのか伝達用なのか。浴室側の壁は古 い板張り。それにブルーのペンキが塗られている。大正時代の末から大きくは変わらない光景 がここにある。

ロッカーは壁の両サイドに古色蒼然としたツルカメ錠のオール木製ロッカー。ロッカーの扉に は例えば「廿三」というように古い表記で漢数字が記されている。籐編みの丸籠も数個積まれ ている。

その他、表示盤がお腹の高さのHOKUTOWのアナログ体重計、天井扇、旧型マッサージ機、冷蔵 庫などがある。

浴室入口は珍しいドア方式。広さは、幅2間、奥行3間。元は副浴槽でもあったのか、奥に半 間四方のスペースが奥に延びている。

天井は緩い円弧を描いた板張りのアーチ型のブルーペンキ塗りで中央に正方形の湯気抜きがあ る。

男女境を含め、壁は古い白タイル張り。上部に緑色のラーメン丼模様のマジョリカタイルがア クセントで使われている。床や湯桶を置く台などのタイルは、更新されていて古いものではな かった。

カラン数は、男女境に2、外壁側に5。脱衣所方の壁には2機のカランを埋めた跡が残っている。

浴槽は、中央に男女境に接するかたちで1間四方の深い浴槽が1つ。水道水を重油で沸かして いるという。最初は井戸水と感じた。入り心地は悪くない。

ビジュアルは男女境の浴槽の上に新しいタイプの絵付けのタイル絵がある。洋風の絵柄で高峰 をバックに川や白樺林を描いたもの。

ご主人は、高校時代写真部に在籍され、写真やカメラに造詣が深い方だった。小生が使ってい る妙なカメラも良くご存知だった。しばし、風呂の話だけでなく写真談義となる。

土曜日の18:00から19:00に滞在。相客は入れ替わりで出ていった1人だけだった。

倉敷の銭湯は、いずれもアルバイト感覚でやっていると話していた。それ単独では生業足り得 ないということだろう。現に、玉島・港湯、旭湯とたて続けに廃業が続く模様。倉敷・船五湯 の大将もいつもながらに釜場で薪をくべていたものの、齢90歳に近い。。。水島に残る第三浴場 の状況は知らないけど、倉敷市はここ数年で急速に数が減り、さらに減っていく様相だ。。。

上がりは古いアーケードの「一番街」の居酒屋に入った。酒も料理も余りにひどいので、直ぐ に店を出た。経営も内容も変わっていたけど、何年か前に入ったことのある店だった。店名や 看板はそのままだったかも知れない。

小生、不満足の店だと黙ってしまうらしい。二軒目の居酒屋でもやはり黙ってしまっていたよ うだ。最後に岡山名物のままかりの握りを頂いたがびしゃびしゃの解凍物で箸で少し触れたら ネタが落ちる代物だった。

こんな日もある。。。

《前回訪問:2005.12.25.》

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://www7a.biglobe.ne.jp/~masayuki/ (風呂屋の煙突)
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