差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2013年9月21日土曜日 10:38
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 太平湯(大田区南六郷)

ナカムラです。

今日(8/10)は、「太平湯(大田区南六郷)」に行ってきました。 雑色駅(京浜急行本線)から、0.8キロ、10分くらいです。

北品川の旧品川宿に江戸時代から続く「丸屋」という下駄屋がある。去年相方が買い求め、良かっ たので、小生も手持ちの下駄の鼻緒の調整と、もう一足と思って出かける。

高知で至上最高気温が更新されるというこの日。東京も灼熱。しかし、明治築という煙草屋併設の 簡素な店舗はフルオープン。冷房などというものはない。そこで、五代目と六代目が並んで仕事をしている。

リサイクル屋でも引き取りを断られ、辛うじて手元に残っていた下駄が見違える履き心地に変わった。もうその場で鼻緒をすげてくれない浅草の某下駄屋に行くことはないだろう。新たに買い求めたパナマの雪駄も好調。しかし、雪駄は雨に弱く、雨が降ったら裸足になって、雪駄は懐に仕舞うようにと教えられた。江戸の粋を楽しむにはかなりの意地が要るようだ。

東品川一丁目の旧花街跡、船宿などが集まる船溜まりと品川百景として保存されている古い住宅を眺め、あまりの酷暑ゆえ、炎天下での行動を早々に切り上げて雑色の太平湯に向かう。

住宅地の中にある細い商店街のなれの果てといったロケーション。付近は青線だったという話があったけどどうなんだろうか。もっとも、蒲田はいくつもの場所にそういった岡場所があった地域ではあるけど。。。

向かいには酒屋跡や木造の古い理髪店などが並ぶ、ここに銭湯があるのに相応しいロケーション。 ここには古くから銭湯があったという。昭和31年に経営を引継ぎ、昭和41年に現在の建物に建替えている。

後方に油井型の煙突を擁する伝統的木造銭湯。すでにビル銭湯も登場していた、戦後の銭湯全盛期。 こういった伝統的な銭湯としては最後発に属すると思う。

千鳥破風にモルタルの大味なエントランスが附属する。コインランドリーはなく女湯の前栽は車庫に、男湯のそれは拡張された男湯の脱衣所になっている。破風のアウトラインが鮮やかな黄色で縁取られて目を惹くもののどちらかと言えば凡庸な面構えかな。

古い花王の古銭が描かれた暖簾を潜れば、左右に松竹錠の下足箱。番台への扉を開ければ、高さがなく”台”とは言い難い左右の視界を遮った控え目の番台がある。そうは言っても、ここら辺の銭湯は、大方がフロント式に変わっている。貴重な番台の銭湯だ。

脱衣所の広さは、幅3間半、奥行3間。さらに、前栽部分に奥行2/3間程度の増築スペースがある。 外壁側にサウナ室がフルに食い込んでいるので、庭を潰し、それに相当する広さを増築している。 天井は、壁とともにくすみの無い白いクロス張り。

ロッカーは、中央に島ロッカーが縦置きに1つと外壁側にある。その他、2枚戸の「チェリオ」の 古い冷蔵庫、Eikoのアナログ体重計、新型マッサージ機がある。

地方遠征はともかく、17:00という陽が高い時間に脱衣所に入るのはかなり久し振りの感じがする。 時間がゆっくりと流れている好きな雰囲気がある。

男女境の上のテレビでは甲子園1回戦屈指の好カード、春夏連覇を狙う浦和学院と強豪仙台育英が対戦している。周りは爺ばかりなのだけど、ひたむきな高校野球を称えながら、風呂よりもテレビ観戦という感じで集っている。

浴室は、幅3間半、奥行4間ほど。天井は木板にペンキ塗りの2段型。島カランは1列で、カラン数はセンターから6・5・5・5・5・0。床は足触りのいいグレーの厚手のタイル。男女境は煉瓦大の白タイルが縦並びで張られている。

浴槽は、奥壁に沿って深浅2浴槽。深槽が麦飯石の気泡湯で、主浴槽の浅槽は、電気、岩盤泉、ボディーマッサージ、7点寝湯×2というてんこ盛りのラインナップ。薪で沸かしたお湯はこの季節やや熱めの42.5度くらい。

サウナは、追加料金不要のスチームサウナ。サウナ室の上には”森林浴発生装置”なる厳つい機器が載っていて、スチームとともに、桧なのか、いい匂いが漂うサウナだ。水風呂がないのでサウナ室を出て、猛暑で全く冷たくはないカランの水を被ったり、シャワーでやはり温い水に当たったりを繰り返す。陽光差し込む浴室で、実にのんびりとした湯浴み。極楽至極。

ビジュアルは、奥壁に中島さんの富士山のペンキ絵。富士山がある女湯にサインと日付(25.5.29.) が記されているようだ。多少波打ったトタンのペンキには、新しい絵独特の新鮮さがあっていいものだ。さらに、男女境には、改装で幅1/4程度に切り詰められた、灯台と大海原(部分)を描いた モザイクタイル絵がある。

酷暑の土曜日の17:00から17:50に滞在。相客は10人ほど。脱衣所では相変わらず浦和学院と仙台育英の接戦で盛り上がっている。大田区あるいは川崎の銭湯の典型的な雰囲気を感じるいい銭湯だった。それにしても、埼玉出身の浦和学院贔屓の相方は接戦につきなかなか出て来ない。。。

上がりの一杯は、すぐ近くの創業1954年とある「もつ焼き酒場/三平」。”オープンカフェ”スタイ ルで、道路にはみ出すようにテーブルが並ぶ。80歳は優に超えているだろうか、”マスター”というとぼけたネームプレートを付けたのが大将で、今は客にツッコミを入れるご担当の様子。焼き手や奥は中年世代が切り盛りしている。

昼過ぎから開いていて、閉店1時間前の18:00には、もうカシラ、ハツ、うずら卵の3種類しか残っていなかった。生ビールの大(1リットル)・小(0.4リットル)を2人でシェアしながら串4本づつ頂いて1人1000円くらい。風呂上がりの1杯としては悪くない、煙くないもつ焼屋だった。

今日は、晴海で打ち上げる東京湾華火大会。品川で”予鈴”の空砲が轟いていたけど、浜松町を出 ると京浜東北線の車窓から大輪の花火と音を感じることができた。

日本の夏を感じる1日だった。満足。

*************************************************
ナカムラ (Masayuki Nakamura)
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp  
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
*************************************************




                                  北品川・丸屋














小生の雪駄と相方の烏面の右近下駄の鼻緒を親子(五代目&六代目)ですげる




              鼻緒をすげてもらったパナマの雪駄
    小生の今年の夏のお出かけ道具(岩手・二戸の竹籠とパナマ帽)




                                    天神湯







































                                  雑色駅へ。
新馬場駅での話。ここは2駅を合体させた長大なホームに短い各停しか停まらない駅だけど、走って先に辿りついたお父さんに
車掌が”乗りますか?”と尋ねるバスのような光景に遭遇した。京急は、駅付近では車掌は車掌室のドアを開けたまま乗務する
ワイルドな路線だ。

目次へ