差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2013年8月3日土曜日 13:28
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 大正湯(大阪市大正区泉尾)

ナカムラです。

今日(7/13)は、「大正湯(大阪市大正区泉尾)」に行ってきました。 大正駅(大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線)から、1.0キロ、10分くらいです。

早朝に東京を出て、本町周辺の村野藤吾設計の建物、輸出繊維会館、綿業会館、森田ビル、フジカ ワビルを見て歩く。繊維問屋が集結する高速道路下の船場センタービル、地下の昭和レトロな「純 喫茶三輪」で喫茶部。さらに、器屋や雑貨屋を歩く。

本町の雑貨屋・hitofushiで、昔、実家の工場の水飲み場に鎖でぶら下がっていた、アルミニウム の水飲みを買った。四谷三丁目の蓬莱湯で見かけて気になっていた。東大阪の町工場で、生産数量 は僅かながら今も作り続けられているらしい。つまらないものだけど、色々な記憶が蘇って来る。。。

時間が来たので、地下鉄で大正駅を目指す。JRの駅にはインパクトの有るトラス橋が掛かり独特 な景観がある。20数振りくらいで眺める。降りるのは初めてだと思う。

同行の相方には”お墓参り”と言われながらも、今春廃業した典型的な大阪型レトロ銭湯の旧菊水湯を目指す。しかし、既に解体間もない感じの更地で、”好評分譲中”の幟が何本もはためいていた。

さらに駅に近い三光湯。これも大きくは大阪風のファッサードを踏襲しながらも曲面を多様した独 特の造り。”本日休業”の札が下がっていたけど、とても惹かれる外観の銭湯だった。

駅の周りは昭和の風景が満ちている。大正湯へ向かう道すがらも、東京では既に失われた風景が残 る商店街を抜けて行く。大阪の土地勘には乏しい。来るたびに、大阪が深く濃いことを思い知らさ れる。

さて、大正湯。泉尾のアーケード街の入口近く、古くからある大規模な団地の向かいに位置してい る。

昭和26年築創業。コンクリ煙突を有する典型的な大阪型伝統的銭湯。その大阪型銭湯のオリジナル に、エントランス上や女湯の前栽に増築が施されている。

土曜日の夕方、前の通りの人通りも多く、同湯への人の出入りも多い。歩道を遮らないように、幅 のある車道の路肩に自転車を停めるのが作法のようだ。自転車も多数停まっている。

暖簾を潜り広いエントランスに入ると両側に日之出とおしどりのマークが入った錠の下足箱。番台 裏には焦茶色と黄緑色のタイルがデザイン的に張られている。

扇形に「男」とある番台への扉を開ければ、古い建物を丁寧に整備・清掃して営業している、もっ とも尊い姿の銭湯がある。

番台は大阪のレトロ系銭湯で良く見かける角がアールになっていて、側板の”田の字”型装飾も曲 線で構成されているもの。そんな優美な番台がピカピカに磨き込まれている。後方の古いショウケ ースに商品が整然と並ぶ様子には美しさすら感じる。

脱衣所の広さは3間四方。2階が載っているので平格天井はさほど高くはなく、2間弱といったとこ ろ。冷房が効いているので硝子窓は閉まっているものの、その向こうに涼しそうな庭池がある。広 さはないんだろうけど、塀の内側の庭に”別世界”が広がっていることに驚かされる。傍らに古井 戸があるとのこと。しかし、現在は水道水を重油で沸かしている。

ロッカーは、外壁側におしどり錠のものが一列に並ぶ。その上にロッカー荒しに注意するコミカル な絵が額装されていた。ロッカーを開けて”あ、盗られた!”と叫んでいるのは、現在の三代目の 祖父に当たる同湯の創業者。女湯には初代の女将を描いた女湯バーションの同様の絵があるようだ。

男女境にある古い流しが凄い。構造は人造石研ぎ出し。シンクに当たる部分は白磁のボウルが2連 で埋め込まれている。今まで遭遇した流しのなかで最高峰であるのは間違いない。大黒柱の黒柱時 計の大きさも銭湯で出会った時計としては最大だと思う。1間はある長さ、幅もある。扉に金文字 で”標準”とあるが、決して標準的な代物ではない。今もゆっくりと振り子を振っている。

外壁側の古いドアの上に標準的な大きさの白熱灯が縦に2つ並んでいる。どう見ても照明ではない ので、スキンヘッドでキビキビと働き回る三代目に電球の役割を聞く。尾道・大宮湯では浴槽に熱 い湯を注湯する場合に点灯される。同湯では、釜場のバーナーが不調の場合に点灯するのだという。 どういう仕組みかは分からないけど、初めて見るものだ。

浴室の広さは、幅3間、奥行4間。天井は横向きのカマボコ型で中央に四角い湯気抜きがある。

カランは、外壁側に8機、奥壁に2機、男女境に4機。さらに、入口に置かれた、楕円形の上がり 水槽の内側に3機の計17機。そして、同湯の床には奥を中心に、関西の郷愁銭湯の重要なアイテム である御影石が敷かれている。アホな小生、石敷きの浴室と聞くと、無条件で反応してしまう。明 日、計画している大阪銭湯も石敷きだ。

浴槽は、踏み込み段のある御影石で組まれた四角いセンター浴槽で湯温は41度。男女境と奥壁に接 するかたちで小石タイル張りのバイブラ&2穴ジェット×2でやはり41度。奥壁を少しくり抜く感 じで1人用の1穴スーパージェット&電気。さらに、入口方男女境に接した1人用の副浴槽の”塩 風呂”。どこだったかの海洋深層水が温い温度で供されている。

ビジュアルは、男女境一面に広がるちぎり絵調のモザイクタイル絵。コーヒーカップを手にしたオ リエンタルな感じの女性の絵。

あがりは、冷蔵庫の最下段が定位置の、地場ローカル飲料の”みかん水”。透明なサイダー瓶に入っ た、砂糖水に香料で香りを付けただけの伝統的な大阪の飲み物。初めて頂いた。今も昔ながらのレ シピを守っているようだ。かなり甘味が強かった。

土曜日の18:50から19:30に滞在。相客は20人弱くらい。古い銭湯だけど、第一線の現役繁盛銭 湯というのがいい。近くに泉尾温泉という銭湯もあったけど、自転車は並んでいなかった。そんな 競合相手を抑える魅力が十二分に備わっていた。源ヶ橋温泉や美章園温泉(廃業)も凄かったけど、 それとは違った普段着銭湯の良さで溢れていた。几帳面(だと思う)な三代目のご常連への気遣い が光っていた。当たり前だけど、銭湯がサービス業であることを改めて教えてくれる大阪下町の印 象深い郷愁銭湯だった。

あがりの一杯は、大正駅ガード下の串揚げ屋。着色料で真っ赤なソーセージを揚げた串揚げなどを 食べた。。。近年、サントリーはハイボールの営業に力を注いでいる。スモーキーな”白州”のハイ ボールを頼んだら、”白州”と記されたグラスで出された。脂っこい料理にはビールよりもハイボー ルが合うように思う。まぁ、酒は、好きな酒を、好きなように、自分のペースで、ほどほど好きな だけ飲めばいいのだけれど。。。

*************************************************
ナカムラ (Masayuki Nakamura)
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp  
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
*************************************************
























目次へ