差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2004年1月24日土曜日 23:57
宛先: 銭湯ML
件名: 高野湯(三浦市三崎)

《H18.3.4.再訪レポート》

ナカムラです。

今日(1/24)は、「高野湯(三浦市三崎)」に行ってきました。
京浜急行の終点、三崎口駅からバスに乗り継ぎ、三崎港で下車、そこから5分くらいです。

港から商店街に入っていくと、商店の古い建物は装飾がかなり凝っています。
輸入マグロによって、この町は寂れてしまったけど、往時の名残と思われる。

酒屋の古い丸型の表札を見ると、「三崎花暮町」。
今は単に三崎1丁目か2丁目だけど、やはり昔の町名は優雅で詩的なものが多い。

恋人同士、夫婦連れ、街には観光客もチラホラ。
高野湯を知っているのかどうか判らないけど、注目して通り過ぎて行く人たちが多い。

四辻に立つ小さな銭湯ながら、「高野湯」と屋号を染め抜いた立派な暖簾。
3層にも見える黒瓦の屋根、なんか重厚な佇まいである。

塀などはなく、通りにいきなり脱衣所のガラス窓がある。
通りを曲がれば、窓の下半分に木製の目隠しがあるものの浴室の裸電球やペンキ絵が見渡せる。
かなりオープンな造りである。

暖簾をくぐって、ガラス戸を開けると、コンクリートの土間。そこに番台。
前面が曲面になっている板張りの簡素な造りではあるが、重厚。
女湯の脱衣所が1/3くらいは見渡せてしまうオープンな構造・・・。

下足箱は土間から上がって男女境に24個ある。
こんなところに下足箱があるのは珍しい。
先客が2人居るけど、下足箱なんぞ使っている人はいない。
が、試しに使ってみると・・・。

錠は、かなりの古さと見受けられるが、何の記載もないもの。こんなの初めて見るなぁ・・・。
ん・・・。
小生の足のサイズは25.5センチ。
別に変わった靴を履いてきたわけではないが、下足箱の奥行きが足らず、戸が閉まらない。
昔の日本人はもっと足が小さかったのか。それとも、下駄仕様なのか・・・。

脱衣所は、幅2間、奥行は土間の部分を含めて3間。
天井は薄い板を細い桟で止めた古い旅館の天井のようなもの。
床は、まさに板の間で、一部は黒光りしていて年季を感じさせる。

外壁側にオール木製のロッカーが32個あるけど、錠が付いているものはすべて半端じゃなく壊れていている(錠の内部はこんな構造になってるんだ)。
いくつかは、扉すらない。
で、床の真中に脱衣カゴが積まれていて、それを使う。

こう書くとボロ銭のようだが、ガラス窓は磨き上げられているし、床の清掃も行き届いている。
決して、ただのボロではない。

浴室への入口の部分、幅半間部分が人研ぎ石、と男女境の方は本物の石かな。いずれにしても珍しい構造になっている。
浴室は幅2間、奥行3間。
天井は奥にある浴槽の部分が低く(1.5間)、洗い場の部分は高さ3間と高く、天井は全面がフラットになっている。

島カランは、四角柱の1辺に4組のカランがある小さなものが1つ、浴室の真中に置かれている。
それ以外は、男女境と外壁側に5つずつ。
カランは日の丸扇の刻印のある旧式だけど、よく見るものとは違う。
取っ手が梃子になっておらず、垂直の棒の上に取っ手がついていて、それを押し下げる方式のもの。
かなり古そうだ・・・。

床のタイルは八角形の白いタイルとブルーの小さな正方形のタイルを組み合わせたもの。なかなかグッドである。

浴室は1槽を2本のパイプで仕切っている。
一方が浅く1穴ジェットが2機。深い方は何の仕掛けもない。
湯温は43度くらいか。

ペンキ絵は急峻な山とアーチ型のダムが描かれている。
色使い(濃いブルー)から察すれば、北鎌倉の新世美術のものと思われる。

男女境には3つのタイル絵(縦4枚×横6枚)。奥から安芸の宮島。銀閣寺。安藤廣重画のどこかの河口図。全て九谷の鈴栄堂だけど、恐らく章仙より古い時代のものの感じがする。「安藤廣重」以外の銘はなし。鈴栄堂のクレジットも章仙画のそれとは異なっている。

この銭湯の浴室の雰囲気を和やかなものにしているのは、男女境の大黒柱と外壁側についている2つの白熱灯だと思う。アルミの笠が付けられた100Wの2つの電球。鎌倉の滝乃湯もそうだけど、空間の演出に重要な役割を果たしている。

重厚、清潔、温かい明かり。明治43年創業。今の建物も戦前の建物とのこと。
三浦の名湯だった。

そう、トイレを借りたけど、釜場の奥にしかない。初めて釜場に入った。番台のおじさんのお父さんなのかな、釜番がいた。トイレは、非水洗だった。

小生が暖簾を出た後、大学生のグループ男2人、女性8人位が入っていった。しばらくすると、ラジオを聴いていた番台のおじさんが外に出てきた。

察するに、席を外すという言葉があるけど、さしずめ番台を外したのだろう。気を使ったのか、いたたまれなくなったのかわからないが・・・。小さな銭湯に、若い女性が団体で訪れてビビッたようだ。何ともったいない。

銭湯では小さなビール170円也を飲み、出てからは、向かいの寿司屋に直行。
燗酒を頼んだら、好きな「立山」だった。値段も200円。やけに安かった。
「以前にも来たことありますよね」と言われた。そのせいかな。

長くなりました。