差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2012年10月25日木曜日 22:38
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 高砂湯(奈良県大和高田市高砂町)

ナカムラです。

今日(9/26)は、「高砂湯(奈良県大和高田市高砂町)」に行ってきました。 高砂駅(JR奈良線)から、0.2キロ、2分くらいです。

なんばの相合橋のホテルを出て、黒門市場の末広湯で朝風呂。そして、うどんを啜って、大阪難波 駅から近鉄奈良線で近鉄奈良駅へ。

奈良にはいい銭湯が多い。昼間は南市町や東辻町といった遊廓跡を探索しながら、旧廓域内の花園 新温泉や、さらに扇湯、大西湯などの銭湯を眺める。

寺社仏閣もかなり好きな方ではあるけど、ほとんど時間が取れない。法隆寺に再び訪れたかったけ ど、いつも遊所跡と銭湯周りで時間切れとなる。

今回は、最後まで、八木西口駅の畝傍湯と悩みに悩んで、結局、大和高田駅から高砂湯に向かうこ とにした。4年前は生憎の定休日(4と9の付く日)で、入ることが出来なかった。

近鉄の大和高田駅で降りて、天神橋商店街、中央温泉などを眺める。4年前は、この町の商人宿に 泊まり中央温泉に入っている。夜、夕飯を食べるのも困るくらいだったのを憶えている。高田の天 神橋商店街というのが昔からの商店街のようだけど、古風で細いアーケードは昼なお暗い。悲しい ほどに寂れ切っていた。

一通り、町の中心部を彷徨った後、少し離れたJR高田駅近くの高砂湯に向かう。

後ろに交通量が多い県道が通るものの、入口のある方はクルマも難儀するくらいの細い道。簡素な 切妻のエントランスがある2階家。後方に煉瓦煙突にパイプを継ぎ足したような煙突が見える。そ して、梅の花を模したような穴が開く立派な塀に囲まれている。

築創業80年位らしい。暖簾を潜ると、左右には下部に日之出のデザインを配したおしどり錠。敷石 と那智黒を組合わせた床が秀逸。料亭の玄関のようだ。しかし、外に駐める場所が無いため、原付 バイクが2台も入っている。

番台へ通じる扉の向こうには、男女とも長い暖簾がカーテンの代わりとして下げられている。その サッシの扉を開けると、スキンヘッドの大将が迎えてくれる。50歳というから小生とさほど変わら ない年齢だ。奈良県の銭湯料金は350円。

脱衣所の広さは、幅2間半、奥行3間半ほど。さらに半間強の緩衝地帯がある。番台は木組みをベ ースにして格子が入る昔ながらのもの。2階が載っているので、天井高は2間弱と高くはない。

半洋風的な意匠の天井が見事だ。大きく言えば平格天井だけど、天板にあたる部分が長方形の板で 風車型に組まれている。ライトグリーンのペンキ塗りということもあって、和風でもあり、洋館の 天井のようでもある。幅広の厚板の床も見事なものだ。

ロッカーは外壁側におしどり錠のものが並んでいる。その一番庭側に「消毒薬」「薬品」「お預かり 品」という扉がある古風なロッカーがある。昔々は番頭がいて、預かり品をこのロッカーで管理し ていたのだろうか。

その他、2枚扉の古い冷蔵庫、TUNAKAWA SCALEという初めて遭遇するアナログ体重計、旧型マッサ ージ機、下がロッカーになったベビーベッド(相方によれば、女湯のは柵に動物の切り抜きがある)、 この町の大衆演劇「弁天座」のポスターなどがある。

今年の夏、この建物に初めてクーラーが導入された。クーラーの風を好まなかった大女将が2月に 亡くなられたからという。新しいクーラーは、この空間に有って、少し浮いている感じがした。

浴室の広さは、幅2間半、奥行3間半。天井は、プラ板張りの緩い円弧のカマボコ型で、中央に湯 気抜きがある。壁や男女境には中判の白タイルが使われている。男女境は、コンクリが盛られ高さ が継ぎ足されている。

浴室は石敷きで、石と石の間はグレーのタイルが張り。カランは外壁側に6、男女境入口方の2。湯 桶の台がある関西様式。そして、カランからは出るお湯は、予想通り熱湯だった。

使い込まれた石組みの浴槽は、男女境および奥壁の双方に接し縦に連なる。手前は何らの仕掛けも ない深槽。奥が1穴ジェットの浅槽。ご常連は熱湯が出るカランを避け、浴槽周りの踏み込み段に 陣取って、浴槽からの汲み湯で身体を洗っている。

井戸水を廃油&灯油のブレンドで沸かしたお湯は42.5度くらい。ややミネラル分が多い井戸なのか、 清澄だけど少しだけ固い印象を受けた。

丸山さんの富士山のペンキ絵の全国浴場組合の入浴の注意書きポスターが目立つくらい。ビジュア ルというものはない。しかし、浴槽などの周りの壁に腰高まで、紺と茶色による昭和初期の”本業 タイル”が残っている。技術が未熟なことがかえって模様を味わい深いものにしている。表面を見 ても平滑ではなく、釉薬が乗っていない所すらある。

定休日の翌々日は空いているという。そんな水曜日の17:45から18:45に滞在。相客は3人ほど。 浴室や脱衣所では一人になる時間もあった。

プラ板張りの天井や、換気扇による強制換気など、郷愁銭湯のイメージと違う部分も有ったけど、 全体からすれば貴重な郷愁が満ちていると言っていいと思う。相方とともに同湯には”驚きがある” という評価は一致していた。

大将は浴室のご老人に寒くないか問いかけていた。亡き大女将もそう言っていたのだろう。4年越 しのリベンジが叶ったけど、大女将の時代に来たら、より感慨深かったかなとも思った。

帰路は奈良のホテルに戻るため、すぐ近くのJR桜井線・高田駅から奈良駅へ。2月に完成したとい う新駅舎はピカピカだった。ただ、辛くも隣に旧駅舎が残されていた。古風な駅舎を見れたのは幸 い。しかし、観光センターか何かになっている姿は寂しくもあった。夕方に灯が消える駅は、小生 が郷愁を感じる”駅”ではない。

今宵の夕餉は駅前の「あじ処 なる 奈良店」という奈良の酒蔵(清酒”長龍”)直営の居酒屋。酒も 肴も美味しく、期待以上の店だった。超観光地にあって、観光地価格ではないのも良かった。

さらにホテルに戻って"The Bar"で一杯。奈良公園だけあって、窓外を普通に鹿が歩いているのに驚 かされた。ここで飲むダメ押しの酒で、奈良の夜はいつも酩酊している。。。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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