竹の湯（葛飾区四つ木）

差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2016年2月21日日曜日 22:48
宛先: 銭湯ＭＬ (sento-freak@freeml.com)
件名: 竹の湯（葛飾区四つ木）

ナカムラです。

今日（6/6）は、「竹の湯（葛飾区四つ木）」に行ってきました。四ツ木駅（京成本線）から、0.3キロ、3分くらいです。

先ずは、両国門天ホールでダメじゃん小出のソロライブ「大田区議会議員選挙かく戦えり」を聞く。4月の区議会議員選挙に立候補して800票で落選した時の経験談に笑いと皮肉を交えたライブだった。2400票が当落ラインだったらしいけど、選挙には周囲をも巻き込む不思議な高揚感があるという話が印象的だった。必死の戦いだったということなんだろう。

その後、隅田川と荒川を越えて京成押上線（旧本線）の四つ木駅へ。何でそんなことをしてたのか記憶にないけど、学生時代、荒川の土手で三脚を立てて写真を撮っていて肺炎になったことがある。その時以来、おそらく30年振りくらいの四つ木。

駅を降りると、あちこちに「キャプテン翼」に関わる物があり、作者高橋陽一氏を輩出した街だと知る。小生は漫画を読んだことも、アニメを観たこともない。しかし、歳下の相方はリアルでキャプテン翼に触れていた世代のサッカー少女だったので、テンションの上がり方が違う。

駅の南側の「渋江商店街」から散策を始める。この辺りは元々は本田村と渋江村で、昭和7年に東京市に編入されて以降、昭和40年まで「本田渋江町」と呼ばれていたようだ。

一帯は、成田山への参詣のため、大正の初年に京成線が通り、開発が進んだ。四ツ木から隣の立石にかけて樟脳から造る初の合成樹脂で写真フィルムのベース材などにも使われた、セルロイド製品の一大生産地だったようだ。

相方は、キャプテン翼の焼き菓子だけでなく、長い年月の在庫が沈殿している荒物屋で江戸川区産の「正直たわし」、化石のような文具店で「バンビ」なる包み紙のトイレットペーパー（静岡県富士市産）を買い求めては喜々としている。

商店街の終わり近くでコンクリ煙突が見えた。隣湯の寿湯。目指す竹の湯と同じく無料サウナと露天風呂があるようだ。コンクリ造の銭湯のようだけど、裏にはぎっしりと木材がストックされている。薪焚きの銭湯のようだ。

さて、竹の湯。京成線が荒川を渡るため高架化された四つ木駅が地上に降りる辺り。ロケーションが立体的な踏切を北に渡れば直ぐだ。

屋根はカラートタンに替っているものの、平入りの脱衣所棟に堂々の千鳥破風を戴く伝統的木造銭湯。長い花道の奥に鎮座する佇まいにひしひしと老舗の威厳を感じる。

フロントの大将とおぼしき方に尋ねても、古くから当地にある古い建物ということしか分らなかった。昭和22年の航空写真を見ると、コンクリの煙突とともに銭湯の姿を確認することが出来る。広い駐車場になっている隣地はセルロイド工場だったのかは分からないけど、コンクリ煙突が聳える大きな工場だったようだ。

土曜日の夕方。家族連れの出入りが多い。露天風呂、乾式サウナ、源泉掛け流しの水風呂があって、追加料金不要。ささやかながら日常からの脱却を楽しむことが出来る銭湯だ。

スロープを昇り暖簾を潜れば、松竹錠の下足箱がある靴脱ぎ場。さらに自動ドアを通ればフロントのあるロビースペースが広がる。フローリングにふっくらとしたソファが置かれた明るい空間だ。フロントにはずんぐりむっくりの大将？　年輩の爺だけど洒落たシャツを着て、メガネにはネックストラップを付けている。誰かに似ているなぁ。

脱衣所は、3間四方。壁はチープな白クロス。折上げだっただろう天井には蓋がなされ、枠は薄茶に、天板は白く塗られている。

ロッカーは小さな島ロッカーが縦置きに2つと入口方の壁側などにある。体重計はデジタル。少し潤いが無いと言えなくはないけど、明るく、磨き込まれたいい脱衣所だと思う。大黒柱の丸い事務所時計には”向井工務店”とあった。

傍らには、濡れ縁を介し幅1間ほどの庭があったけど、ただの土だった。しかし、乱雑に物置きにされるでもなく、雑草も生えていない。素っ気ないけど、この姿できちんと整備されている。ある意味、同湯の経営方針が見て取れる庭なのかも知れない。

浴室の広さは、幅3間、奥行3間半。天井は木板にペンキ塗りの2段型。高天井の周囲4辺は折り上げてある古風な造り。戦前の建物なのだろうか。手入れが行き届き、一分のくすみもない。

島カランは2列で、カラン数はセンターから6・0・5・5・5・3。床のタイルは男湯ながらピンクと白を組み合わせた独特の幾何学模様のもの。

浴槽は、奥壁に沿って、センター側から8点座ジェット×2の深槽、非稼働バイブラの主浴槽。一番外壁側には、カランを開ければ”源泉掛け流し”になる水風呂がある。

井戸水を重油で沸かしたお湯は42度くらい。浅井戸なのだろう、水風呂は微かな臭いがしないでもないけど、沸かしたお湯にそれはない。湯加減も丁度よく、柔らかで1日の疲れが溶けるようないいお湯だ。

元々は庭だったんだろうか、外壁側の屋外に、屋根などないオープンさと広さの石張りの露天風呂がある。屋内の浴槽よりも若干温度が高め。蒸し暑い季節に合った薄荷系の薬湯が豪勢に供されている。温度を維持するのにかなり燃料が嵩みそうだ。さらに、露天の脱衣所側には無料の乾式サウナもある。隣の寿湯もそうだったようだけど、葛飾区の銭湯は大田区銭湯同様に”そんなに貰えねぇよ”と、サービス競争が厳しいのかも知れない。

ビジュアルは、ベニヤ板張りの奥壁に低い位置から中島さんの堂々とした赤富士のペンキ絵が広がる。女湯は立山連峰のようだ。ただ、ベニヤを止めるたくさんの釘が錆びて、黒くなっている。感覚的な問題だろうけど、くすみやひび割れよりも少々気になる。

土曜日の18:50から19:50に滞在。夕飯前の混雑が過ぎた、狭間の時間帯だったのかも知れない。相客は4､5人ほどと少なかった。これと言ったレトロな雰囲気はないけど、清潔で明るく、きちんとしたサービスを提供してくれる優れた銭湯だった。

上がりの一杯は隣駅の京成立石の「蘭州」へ。内外観はただのスガレ系の中華屋だけど、皮から作る水餃子の旨さにいつも驚かされる。ビールに水餃子。さらに焼き餃子とワンタンを頂いた。ワンタンは”業務用”かも知れないけど餃子類はさすがだ。

その後は、高架化と再開発で消失すると言われている線路際の旧特殊飲食店街を歩く。完全に浄化されていると思いきや、怪しげな外国人女性達が店先に屯していたり、老齢の御仁と不機嫌な顔で腕を組んで街路を歩いていたり、そんな光景に出くわした。まだまだカタギの街にはなれないようだ。

※6/17に中島さんによる黄金富士のペンキ絵に描き替えられました。

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ナカムラ　（Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com（風呂屋の煙突）
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　隣湯の寿湯