多丸湯（船橋市湊町）

差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2012年11月4日日曜日 12:37
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 多丸湯（船橋市湊町）

ナカムラです。

今日（10/28）は、「多丸湯（船橋市湊町）」に行ってきました。船橋駅（総武本線等）から、1.1キロ、12分くらいです。

東十条駅近くのイタリアンレストランで遅めのランチを頂き、秋葉原駅経由で船橋駅に向かう。

千葉方面は、思い出せないくらい久し振り。居酒屋「一平」がある、人しか通れない飲み屋小路を抜けて、本町方面へ。飲み屋小路の片側が巨大マンションに替わっていて驚く。

煙突から黒煙を棚引かせる松の湯。そして、旧常盤湯とまわる。松の湯の入口には”足の臭い人お断り”といった趣旨の貼り紙がある。小生は入れないかも。。。旧常盤湯の傾いた看板に灯りが点っていた。湯質優れた黒湯で誉れ高かった同湯。復活とすれば”銭湯界”における重大ニュースだ。直ぐに写真付きで全世界に発信しなければと身構えていたら、ローカルなアートイベントだった。しかし、丸山さんの「野尻湖」のペンキ絵を再び見ることができたのは儲けもの。

さて、多丸湯。船橋市湊町。昭和29年、船橋漁港のかたわらで創業した、二重の千鳥破風を有する伝統的木造銭湯だ。それぞれの鬼瓦に屋号が入っている。紺地に屋号を染め抜いた暖簾が凛々しい。そんな銭湯だけど、3日後の10月31日を以て、59年余りの歴史を閉じることになっている。

廃業の告知を店外に張る店は多くない。同湯では暖簾の横、9月のカレンダーの裏紙に、マジックペンで”ご愛顧””お引き立て有り難う”などという言葉が並ぶ感じのいいもの。理由は書かれていなかったけど、後を継ぐものがいないとすれば体力的なものだろうか。

暖簾を潜れば、左右に旧型さくら錠の下足箱。エントランスの真ん中に、看板猫にしてはかなり煤けた猫がいて、客の出入りを眺めている。

自動ドアを開ければ、パーティションで仕切ったロビースペース。一角のカウンターには、上っぱりを着た女将が詰めている。正面の大黒柱の前には、かつて船橋で使われていた木造漁船の模型が置かれている。ここが、漁師町の銭湯であることを唯一感じさせてくれるものだ。

船橋の風呂銭は420円。サウナ料金100円を払い忘れ、湯船に浸かった後で払いに来るはめに。構造上小窓などがなかったので、裸で脱衣所の入口まで出てきて、女将を呼ぶ。ありそうだけど、ここまでした記憶はない。しかも、こんな時に小銭がない。。。

脱衣所は、オリジナルは3間四方。天井扇のある天井は、一部抜けてはいるものの折上げ格天井。前栽を潰してスペースを拡張。一方でロビースペースとサウナ室に侵食されている。脱衣所の形状とSakura-3錠のロッカーの配置は、ちょっと表現しにくい。その他、古い"keihoku hakari seisakusyo"とあるアナログ体重計、ベンチなどがある。

浴室は、幅3間、奥行4間ほど。天井はペンキがだいぶ草臥れた2段型。ただ、天井には朱を入れた井ゲタの模様。ペンキ絵の上にもやはり朱を入れたラーメン丼模様のような雷紋があり、ボロだけど主張している。

入ると数人の客のうち刺青系がお3方。少し怯むが、皆明るく談笑し行儀はもちろんのこと、雰囲気も悪くない。そのうちの1人が3歳の女の子を連れていたので、世辞ではなく”可愛いですね” と声をかけると、尖った顔の御仁の表情が一瞬で緩む。

島カランは1列で、カラン数はセンターから5･5･5･4。床のタイルは、星型のベージュ色。カラン周りにはサワーピンクの大理石模様のタイルが使われている。井戸水のミネラルが落としにくいということを割り引いても清掃がイマイチの感がする。銭湯の仕事で一番大変なのは掃除という。脱衣所、浴室の掃除に釜の掃除。掃除するところは多い。やはり、体力的な限界を見る思いがする。

浴槽は、奥壁に接した深浅2槽。深槽は41度くらいの淡い実母散。浅槽がバイブラ＆2穴ジェット ×2。43度強とやや熱い。最初は刺青勢や、地元銭湯マニアなどで湯船が一杯。場所を譲ってもらい浸かる場所を確保する。古い銭湯でこういうのはいいものだ。

サウナ室には、場末の臨場感を高めるC級演歌が延々流れている。隣では全身”美術品”という太った御仁がシャドーボクシングを始める。”ジョー、打つんだジョー！”とは言ってなかっけど、風貌はボクシングジムの会長。ミットを捌く動きが素人っぽくなかった。

浴室やサウナ室に有線で”あ～ぁ～、浜名湖・・・”とかコブシを回す演歌が流れている。北の海や摩周湖なら演歌にもなるけど、新幹線が横切る明るい浜名湖は、演歌のコンセプトとしては無理がある・・・。

サウナを出れば、家庭用のステンレス浴槽という特徴的な水風呂。少し黄褐色の色付きがある井戸水の掛け流し。1人用なので、入ればざば～っと水があふれ、奥から入口の方まで水が流れる豪快さ。全身美術品の会長がいかにも気持ち良さそうだ。小生もそれを真似しようとするものの、何と浴槽に1/3くらいしか水が残っていない。サウナと水風呂を往復するのは会長と小生の2人。小生は1度も水風呂をざば～っと出来なかった。。。

外で写真を撮っていたせいか、頭に白タオルを巻いた地元銭湯マニア風に声を掛けられる。同湯が船橋界隈で最も趣深い銭湯だという。常盤湯がいい銭湯だったこと。習志野には鷺沼温泉という温泉銭湯があること。温い実母散に浸かって、二人で早川さんの「伊豆/平成二十年八月二十五日」のペンキ絵を見上げながら、そんな話を伺った。

上がりは、明治牛乳120円を頂く。

廃業を3日後に控えた最後の日曜日の営業。夕飯前の16:55から18:00まで滞在。相客は10人は超えていたと思う。湊町にある船橋漁港の銭湯。キャラが濃い相客が多かったこともあって、印象に残る銭湯だった。

上がりの一杯は、飲み屋小路の仲通りの船橋漁港で揚がる魚を出す居酒屋「三番瀬」を目指したけど休みだった。揚がったばかりの鰯に軽く塩して焼いたものを頂き、余りの旨さに絶句したことがある。「一平」も「加賀屋」も休み。結局、消去的にワタミの炭火焼き鳥「炭旬」に入る。拘りの鳥釜飯はおいしいけど、他はまぁまぁだったかな。。。

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ナカムラ　（Masayuki Nakamura）
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　松の湯

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　旧常盤湯