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差出人: Masayuki Nakamura送信日時: 2023年12月23日木曜日 11:32
宛先: sento-freak@googlegroups.jp
件名: たつの湯(練馬区石神井台)

ナカムラです。

今日(12/16)は「たつの湯(練馬区石神井台)」に行ってきました。
武蔵駅(西武新宿線)から1.6キロ、23分くらいです。

高輪台のパン屋を目指して家を出たものの電車の中で土曜日は定休日だと気が付いた。急遽、神保町で降りて、先ずはカレー店のガヴィアルで腹ごしらえ。行列ができている。食ベログの百名店らしい。甘いけどスパイスが効いた不思議なカレーだった。ジャガイモが付くのはよく行っていた今はなきペルソナ(2019年閉店)と同じだった。あまり他では遭遇しない。神保町界隈のローカルルールなのかな。

腹が朽ちたので東西線の竹橋駅に向かって歩きテレビドラマ半沢直樹のロケ地だった学士会館へ。白山通りが拡幅されるために旧館(昭和3年築)は曳家で下げられ、残念ながら増築部(昭和12年築)は解体される予定となっている。さらに、じっくり見たことがない毎日新聞社などが入るパレスサイドビルなどを見学し、高田馬場駅経由で西武新宿線の武蔵関駅に向かう。

航空写真を追って見ていくと、たつの湯は昭和40年代に付近が畑から住宅地に変っていく過程で、畑の中に建てられた銭湯のようだ。今も都心の銭湯に比べて広い敷地を持っている。所沢と江戸を結ぶ所沢道(早稲田通り)という古道に面している。

千鳥破風と唐破風のエントランス。屋号を記したコンクリ煙突はゆっくりと煙を棚引かせている。高い建物がないので、途中、目的地の煙突の煙が見えて、臨時休業だった都市ても他の銭湯への転進が難しいのでほっとした。

建物の前には別棟のコインランドリーと余裕を持って10数台は停められる広い駐車場がある。エントランスは唐破風だけど、別途木造の庇が人研ぎの台座と木製の柱に支えられている。微細な点だけど珍しい構造だと思う。

同湯は近所に住んでいた立川談志師匠が通った銭湯だった。銭湯好きには良く知られた話だけど、師匠は色紙によく「銭湯は裏切らない」としたためた。横浜のどこの銭湯だったか、師匠の「(銭)湯は裏切らない」という色紙を見かけて、その言葉を反芻しながら湯舟に身を沈めたのを憶えている。いろんな解釈があるけど、人生が思い描いていたものと少し違ってきたかなと思ってたとき、身体の疲れだけでなく、心をも癒してくれる言葉だと思う。

どんな経緯か忘れたけど師匠が2011年に亡くなられた際に、NHKが師匠が銭湯で寛ぐ過去映像が何処の銭湯であるかを確認して回っていたので、同湯であることをお伝えした。師匠はすぐ近くの南大泉に住んでいて、度々同湯を訪れた。時に娘さんと訪れることもあったという。最初は初めて見かけた時、大将は愛人だと思ったという。

カランは両サイドと島カラン1列。奥壁に沿って大きな浴槽が1槽のみというシンプルな構成。薄紫色の熱い湯が溢れんばかりに注ぎ込まれている。鼻にかざすと微かに実母散の香りがする。しばらく浸かっていると身体がピンク色に染まるほどの熱さだった。

奥壁は2021.10.21.に描かれた中島さんの赤富士。富士山の上部だけを、迫力あるタッチで描いている。男女境には岩国の錦帯橋の絵付けのタイル絵が幅いっぱいに広がっている。

清潔に清掃された空間と豊富な熱いお湯。それしかないが、何の不足もない。居心地のいい浴室だ。

上がりは缶入りのイチゴミルク120円を頂く。脱衣所では1袋にたっぷりとミカンが入ったものが200円で売られている。来る途中の野菜の直売所(自販機)では農家の方が野良着姿で商品を補充するところだった。ほうれん草、キャベツ、白菜などが100円で売られている。畑は少なくなったけどまだまだ農家が健在だ。

土曜日の16:15から16:50に滞在。相客は延べで10数人ほど。今は以前のように銭湯が閑散としていることはないのかな。まぁ、優れた銭湯につき元々閑散などしていないのか。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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