梅の湯（足立区千住）

差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2007年10月23日火曜日 23:17
宛先: 銭湯ＭＬ (sento-freak@kt.rim.or.jp)
件名: 梅の湯（足立区千住）

ナカムラです。

今日（9/20）は、「梅の湯（足立区千住）」に行ってきました。北千住駅(ＪＲ常磐本線他)から、０．７キロ、７分くらいです。

京成立石駅前に残る旧赤線地域を見学。ついでに、11月4日を以て廃業という「福の湯（東立石）」を見て、熱狂的な支持層を持つモツ焼きの有名店「宇ち田」で休憩する。

「宇ち田」がある京成立石駅前の仲見世商店街のレトロさは、結構ピュア。昭和３０年代が残る化石のようなアーケードだ。おでん種の店、ショーケースの中に庶民的な部位の精肉がぎっしりと詰まっているお肉屋さんなど、イニシエの光景が残っている。

さて、荒川を渡り返して北千住へ。駅から日光街道の旧道「宿場町通り」を北上する。有名な「槍かけだんご」を過ぎると、雑草が生えた敷地へのアプローチがある。その奥に、薪用の材木と樹齢を重ねた立木を脇役にした、いい空間がある。

その正面に、昭和５年築の黒瓦を載せた銭湯建築。現在は枯れて質素な佇まいになっているけど、規模はさほどではないものの、かなりの風格だ。入母屋屋根の入口には懸魚。その奥の脱衣所のむくり破風の部分にも寺社にあるような懸魚に似た風雨除けがある。後方には鋼帯補強のコンクリ煙突が見える。

入口の両サイドは笊を編んだような模様のタイルが使われている。牛乳石鹸の暖簾はいつのものだろう。洗い晒されてやはり枯れている。それを潜って入って行くとほの暗いエントランススペース。正面に傘を突き刺す式の傘ロッカー。松竹錠の下足箱。番台裏の窓の桟にも、埃の奥にではあるが、細かな意匠が施されている。

昭和中期のかぎ裂き模様のガラスが嵌められた木戸をがらがらと開ける。古色蒼然とした木造ワールドが広がる。どこぞかの古刹の趣すらある。激シブの空間だ。

番台は意外にも前面がカーブした新建材の高いものだ。恐らく、当初の番台はあまりに低いため、この番台に交換されたのだろう。まぁ、色だけは焦げ茶色でコーディネートされている。なかなか解っておられる。

３間四方ほどの空間。天井は折上げ格天井。かなり古いタイプの天井扇が下がっている。埃っぽかったけど、夏は回っていたのかなぁ・・・。

ロッカーは、島ロッカーが１つと、入口方の壁に松竹板鍵のものがある。その他、ＨＯＫＵＴＯＷのアナログ体重計、６つの叩き手がある、あまり見掛けない旧型マッサージ機などがある。

変わっているのは、池側の一角がカーペット敷きの座敷になっていて休憩スペースのようになっている。

浴室は、幅３間、奥行４間の２段型。ただ、ウィング部が一部水平になっていて、３段型のような趣がある。天井高もやや高い感じがする。

土曜日の１６：００。今日は晴れているけど、脱衣所と同様で、ほの暗さがある。幽玄な感じと言っていいだろう。床のタイルがモスグリーンを基調としたレトロな小石タイルになっているからだろう。確か、かの有名なボロ銭「第二香藤湯」もこんな床だった。

島カランは１つで、カラン数はセンターから６・５・５・５。さらに、脱衣所との仕切り壁に４つほどのカランが付いている。カランは透明なプラスチックの取っ手の角型のもの。古いものではない。

浴槽は深浅２槽。浅槽は２穴ジェット×２。浴槽の底にはバイブラ設備が見えるけど、稼働はしていない。深槽はガリウム石をいれたステンレスの籠が浴槽の底に置かれている。故障も含め、この幽玄な浴室に相応しいラインナップだ。すべてが渋い。

湯温はいずれも４２度といったところ。さほど熱くないのが意外な感じ。お湯は清澄だ。そして、あくまでも柔らかい。薪焚きの湯でも、極上のランクだろう。薪を割る大将の汗を、幼子の顔を拭うがごとく、笑顔の女将が拭っている。そんな、夫唱婦随の湯だ。

ビジュアルは、奥壁全面と外壁側にまでＬ字型に延びているモザイクタイル絵。雪嶺をバックにした湖の図。湖上には帆かけ舟。湖岸に花が描かれているが珍しい。適度のカビが、やや薄っぺらいモザイクタイル絵に陰影と奥行きを与えている。男女境もモザイクタイル絵で、湖や風車が描かれている。

上がりは、ガラス戸を開けて縁側に出で涼む。そこには、灯篭、石橋がある正統的な庭池が設えられている。植栽の整備が中途半端なんだけど、野だけど卑ではない。何だかそれが逆に「自然」を感じさせる不思議な庭だ。

同湯にビールは無かったので、近くでビールを飲んだ後、立ち飲みの最高峰との呼び声もある「徳多和良」、アフリカ料理「ＢＡＯＢＡＢ」、韓国酒場・・・。なんか、終電近くまでハシゴしてしまった。

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ナカムラ　（Masayuki Nakamura）
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徳多和良