差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2008年8月17日日曜日 14:36
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 万才湯(港区芝)


ナカムラです。

今日(8/15)は、「万才湯(港区芝)」に行ってきました。 田町駅(山手線)から、0.4キロ、5分くらいです。

今日は、久ぶりに黒湯の池上・桜館にでも行こうとしたけど、帰り際に打ち合わせが入って出 るのが遅くなった。行けない時間ではないけど、暑いこともあって先週振られた駅からも近い 万才湯にする。

田町駅から慶應大学三田校舎に抜ける、慶応仲通りの周辺は戦災を辛うじて免れたエリアだ。 現在は、制帽屋などがあった慶大門前の商店街からサラリーマンのオアシスに替っているけど、 よく見ると戦前建物が少しだけ残っている。

万才湯のはす向かいにも洋風の戦前物件がある。周辺はクルマの通らない路地なので、通りに テーブルを出しての立ち飲みや、意図してガラス戸越しに通りを見渡せるようなレトロ風に仕 上げた居酒屋などがあって、付き合い浅からずといった男女が飲んでいたりする。

先週、一人シブく呑める居酒屋をチェックしておいた。しかし、お盆なので、予想はしていた ものの路地奥深い目当ての店は休みだった。

まぁ仕方ない・・・と、金曜夜の喧噪を抜けて万才湯の暖簾を潜る。同湯も戦火を潜りぬけた 戦前からの銭湯。その後早い時期にビルに建て替えられ、今は古いビル銭になっている。

同湯の先々代は石川県から出てきて約20軒の銭湯を経営していた。父が早世し、そして祖父が亡くなった後、大将が中央官庁を退職されて同湯の暖簾を継いだ。それから40年になる。 全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会という、覚えられないような長ったらしい名前の団体の理事長。 日本全国にある約4600軒の風呂屋のトップだ。審議会委員など数多の要職を歴任されている。インテリ の風貌だけど、まぁどこにでもいる風呂屋のオヤジでもある。

同湯は、第一川高ビルというビルの一階。表は「ふく鳥」という居酒屋になっていて、建物の 脇に入口がある。通りを塞ぐように国旗よろしく紺地に白の「ゆ」という旗が翻っていたり、 入り口に繋がる通路には浴場組合のポスターと同様のイラストのオリジナル暖簾が下がってい たりと、アプローチにいい演出がなされている。

昨年11月に「昭和のぬくもり」をテーマに大改装。灯りは全て温かみの電球色で統一するな ど、小さなビル銭ながら、内部をレトロな風合いに変えている。

フロントは、狭く縁台や冷蔵庫など最小限のものしか置かれていないけど、不思議と居心地が いい雰囲気に満ちている。灯りのせいもあるけど、作り物にせよ内装が木造建築になっている からだと思う。

脱衣所は、幅2間半で、奥行もそれくらい。天井は普通の住宅と同じくらい。外壁側に扉を板 張り風にアレンジしたロッカー、そして、縁台、旧型マッサージ機、Keihokuのアナログ体重 計など最小限のものだけがある。

男女境は木製の桟の摺りガラスを嵌めた引き戸になっている。もちろん鍵が掛かっているんだ ろうけど、あまり近くに寄り過ぎると裸身のシルエットが映らなくもない。まぁ、小生が入っ ている時に女湯から聞こえてきたのは、残念ながら婆さまの声ばかりであったが・・・。

浴室は、幅2間半、奥行3間半。天井は、ガン吹きの高さ3間弱のヘの字型天井。古いビル銭 湯なのでそこそこ高い。

床はヒスイ色の小石を固めたもの。風呂でこの材料を使っている例は見たことがない。ビュア ルとして、男女境は瓦を載せた屋敷塀を模し、外壁のアルミ窓の内側に木製の目隠しを敢えて 窓の内側に設置している。樹脂製の波板が普及する前に庶民住宅に広く使われていたものだ。

カランは、男女境に5、外壁側に4、脱衣所方に1。桶や椅子が浴室の真ん中に積んであるの が珍しい。

浴槽は、奥壁から外壁側に、深槽、主浴槽、薬湯とL字型に設置されている。薬湯は42度と 普通の温度だけど、深槽と主浴槽は46度強と尋常ならざる温度だ。入れなくはないけど、ご 常連風に、いつもこの温度かと聞いた。「これじゃ入れないよね。オヤジも熱かったら埋めてい いって言っていたから、埋めなよと。」

果敢にも顔を歪め微かに呻き声を上げながらはいっているご仁もいたけど、まぁ、稀な高温だ。 小生は無理せず、お二方ほど入って湯がこなれた頃に入らせてもらった。

そうこうしているうちに、洗い場の電気が消えた。相客は驚く風でもない。程なくして、天井 のノズルから微細な水滴が噴霧される。いわゆるミストサウナのミストなんだけど、洗い場の 電気が消えて降ってくるという有無を言わせぬ押し売り的なサービス。一同、立ち上がってそ の霧を浴びている。ちょっと不思議な光景だ。もちろん、こんなのは初めての遭遇だけど意外 に悪くないかな。

同湯の最大の評価点はビジュアルのペンキ絵。奥壁にはなくて、脱衣所方の入口上に設置され たカンバス形状のものに描かれている。右下に「レインボーブリッジ/SANUGA」とある。もう8 4歳になられる埼玉方面で9000枚のペンキ絵を手掛けられた大御所だ。意識して佐怒賀次 男師のペンキ絵を見るのは初めてだ。

なぜ、東京の万才湯にあるのか不思議だけど、ブルーを基調としたレインボーブリッジの夜景 は秀逸だ。小生の大好きな歌にいしだあゆみが昭和44年に歌って大ヒットした「ブルーライ トヨコハマ」という歌があるけど、まさにそんなイメージのペンキ絵だった。銀座の「銀座湯」 に銀座の夜景のタイル絵があるけど、銭湯のビジュアルで夜景は極めて稀なモチーフだ。

この絵を再び見に来ることがあるだろう・・・。今日振られた居酒屋とセットで・・・。

お盆の金曜日。21:00〜21:45に滞在。相客はそこそこ多くて10数人。客層も若くサラリー マン風の人も多い。

上がりは、ビール類はないので、隣の立ち飲みでレモンサワー。 金曜日の夜だけど、帰りの電車は混んでいなかった。

《前回訪問:2008.08.09〔未入浴〕》

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