生田浴場（川崎市多摩区枡形）

ナカムラです。

今日（3/22）は、「生田浴場（川崎市多摩区枡形）」に行ってきました。向ヶ丘遊園駅（小田急線）から、1.1キロ、12分くらいです。

昨日今日と、ご先祖への挨拶回りで東奔西走。「死んだらお仕舞い」と言っていた父だけど、父ならどうしただろうかと死して尚、教えを請うことは多い気がする。墓前でぼた餅食べて酒盛りするのがナカムラ家流。彼岸も中日を外すと静かだった。

墓参りの後は、読売巨人軍の選手御用達の店で昼餉。寿司と鰻を一緒に商うのは田舎だと弟が解説していた。もっと田舎に下れば天ぷらが加わるらしい。風も穏やかな昼下がり。少ない家族との歓談がある。

帰りは風呂に入って極楽浄土を感じ入る。

さて、向ヶ丘遊園駅。かつて向ヶ丘遊園があった馴染みの南口とは反対の北口に降りる。北口には、未だ開業当初のギャンブレル屋根（腰折れ屋根）の瀟洒な駅舎が健在で嬉しくなる。「登栄会」という商店街には銀行の登戸支店が並ぶ。登戸駅は隣駅だけど、この辺りも登戸のようだ。

府中街道と世田谷通りが交差する「多摩署前」という大きな交差点に立てば、屋号を記したコンクリ煙突がひときわ高く見える。多摩署とは消防署のようだ。消防士たちの訓練の声が聞こえる奥の路地に同湯の入口があった。

趣ある長いアプローチの奥にコンクリ煙突と黒瓦を乗せた大型の伝統的木造銭湯が佇んでいる。エントランス周りは改築されているものの、居宅になっている2階に載る千鳥破風はそれは堂々としたものだ。

外観からは分らないけど、大井町の東京浴場、西小山の東京浴場（ビル銭に改築）、千石のおとめ湯（廃業）と同様に、男・女湯の中央に置かれた庭池をロの字型に囲むのという稀有な構造の浴舎を持つ。以前から気になっていた。

暖簾を潜り、上がりかまちに足をのせると新建材の床が撓む。SakuraｰG錠プラ板仕様の下足箱に靴を放り込む。

ロビーは広いものの、フロントしか明かりが点いていない。相方が女将に風呂銭を渡す。サウナはプラス300円。下足のプラ板鍵と引き替えにリストバンドとバスタオルを貸してくれた。

もう、築60年か70年を経過した建物という。「儲からないのでやめたい」とポツリ。そこで会話が続かなかった。

ロビーの傍らには立派な池が広がる。池の一部をロビーの床下に取り込み、その上にアクリルの透明な床を渡し、鯉などの泳ぐ姿を眺めることが出来る構造。しかし、もう夕方なのに節電モード。それ故の殺伐さを禁じえない。

脱衣所の広さは、幅3間半、奥行3間ほど。天井も壁も模様の入った白いクロス張り。だだ、昭和の末頃という中普請以降、更新投資もままならない感じ。壁紙は煤け、所々にガムテープによる補修も目立つ。「歌える焼き鳥」というキャッチコピーに失笑。そして、この広告看板が、ここが郊外だということを示している。

ロッカーは、籠が入る横長の大きなものと通常サイズよりやや小さめのもの。いずれもSakuraｰ3錠。天井には装飾過多の明かりを点けずに埃を被った照明器。バブル時代のものだろうか。余計に時代遅れを感じる。

その他、Kamoshitaのアナログ体重計、飲料の自販機、中央に幅広の縁台などがある。

浴室の広さは、幅3間半、奥行4間ほどと大型の銭湯だ。天井はプラ板張りのM字型で、高さは2間強とさほど高くはない。女湯との間には、屋外になっている幅1間、長さ3間ほどの溶岩を配したくだんの庭池があるけど、東京浴場のように”水中窓”もなく、やや扱いが素っ気ない。そもそも池に水が張られていない。

島カランは2列で、カラン数はセンターから6・5・5・5・0・2。カラン回りには一部曲面のタイルも使われ、20年ほど前の中普請よりも古い時代の物のような気がする。床のタイルは中央に円形のデザインを置いた、オフホワイトの中判のもの。

表の梅は見頃が過ぎ、桜はもうちょっとという頃。寒いというほどではないけど、カランのお湯が最後までお湯と呼べる温度にはならないのは厳しい。それよりはマシな、シャワーのお湯で凌ぐ。一方、浴槽のお湯は評判通り熱い。。。

浴槽は、釜場への通路を挟んで奥壁の前に、男女境側に副浴槽と主浴槽が並ぶという横浜大型銭湯の配置。湯温は44度はあるだろう。座ジェット×2の副浴槽はそれより1度くらい低かったけど、最近少なくなった熱いお湯の銭湯だ。

サウナは何もなく静寂。牢名主のような風貌の先客に”戸をキチンと締めろ”と凄まれ、ちょっとだけビビる。しかし、”ボロくて建て付けが悪いからよ”とフォローが入った。確かに、意識的に枠に押し込まなければ閉まらない歪んだ戸だった。

ビジュアルは奥壁に洋館、高嶺、湖、白鳥という絵柄のモザイクタイル絵。額縁のようなタイルによる縁取りがあるのが珍しい。

上がりは三重か和歌山だったか、初めて見る柑橘果汁の入った缶ジュースを頂いた。

三連休の中日の土曜日の17:10から18:00に滞在。カランからお湯が出なかった銭湯だけど相客は10人を越えるくらい。近くに隣湯と呼べるものはない。”やめたいんだけど”という言葉に、老舗として地域に世話になってきたという思いとの葛藤があるのだろうと感じた。久し振りの神奈川銭湯。風前の灯火感を強く感じる銭湯だった。

　　　　　　　　　　　　　「登栄会」という商店街。向ヶ丘遊園駅だけど、駅前の住所は登戸のようだ。

　　　　　　　　　　　　小田急開業時期の唯一の生き残り駅舎。同社の旧い車掌が妻面に刻まれている。