差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2008年4月13日日曜日 12:13
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 亀の湯(厚木市元町)

ナカムラです。

今日(4/12)は、「亀の湯(厚木市元町)」に行ってきました。 本厚木駅(小田急線)から、1.1キロ、12分くらいです。

地名が「元町」というくらいなので、かつては相模川の水運で栄えた厚木の中心地。現在の国 道246号(矢倉沢往還)に、1908年に相模橋が架かるまで、ここに渡船場があって、常時5 艘の舟が置かれていた。同湯の近くに石碑が建っている。

そして、橋が架かったのと同じ頃、すぐ近くの寿町に田圃を埋めて花街がひらかれた。花街の 中には「竹の湯(1908年開業)」があって1975年くらいまで営業していた。亀の湯の創業も大 正時代で花街からは100メートルと離れていない。「竹の湯」とともに、かつての厚木の中心 地を担った銭湯だろう。

相模川河畔の同湯は、寂れ切った元町商店街の細い路地裏に入口がある。離れれば油井型の小 振りな煙突が見えるものの、知らなければこの銭湯を目にすることはないだろう。また、訪れ ても全貌が見えない。そんな迷路じみた路地の奥に佇んでいる。

土曜日の16:30。中からはテレビの大きな音だけが聞こえている。暫くすると、仕事着で 板場へ向かう料理人が出てきた。男湯に何人入っているかを問うと、閉めた戸を再び開けて、 誰もいなくて空いていることを教えてくれた。

ファッサードは、腰高まで鉄平石が張られ、木戸や窓枠は茶色で統一されている。女湯のみ「女 湯」という古いホーロー看板が掛っている。昭和36年に改築された建物は古いものの内外とも に丁寧に維持され清掃されている。

戸を開けるとコンクリのタタキ。番台は小さい銭湯の割に高い。女将は少し耳が遠いようだ。 430円払って、幅2間半、奥行2間ほどの脱衣所に上がる。建物に囲まれているのでやや薄 暗く小さな空間だ。

小さな下足箱。外壁側に松竹板鍵のロッカー。脱衣籠も現役。誰もいないし、小さな浴室から も目が届くので籠を使う。その他、Keihokuのアナログ体重計、飲料がぎっしり詰まっ た2枚扉の冷蔵庫などがある。

女湯も見せていただいた。男湯よりも、かつては客が多かったという女湯の方が、脱衣所、浴 室ともに1間弱幅広になっている。

浴室は2間半四方と小さい。小田原「田浦湯」よりは大きいものの、小振りな横須賀銭湯より は小さい。天井は2段型。島カランは1つで、カラン数はセンターから5・3・3・4。島カ ランもかなりの小サイズ。

床には古式ゆかしい亀甲型の正六角形の白いタイルが平滑に張られている。そして、手入れが 難しい木桶がカラン数と同じ15個、山形に積まれている。古くて小さな銭湯。ご高齢なのに ここまで清潔に維持するのは大変だろうと思う。

浴槽は奥壁に沿って深浅2槽。浅槽は41度くらいで、鉢型の焚出し口から湯が溢れてくる。 深槽は手をかざすとかなりの熱さ。循環設備がないらしく、傍らの湯もみ棒でかき回すと42 度くらいになる。明るくて、小さくて、清潔な浴室。大半の時間は小生だけ。女湯にも客がい ない。存続が懸念される状況だけど、至極贅沢な空間を満喫する。

ビジュアルも手抜きがない正統派だ。男女境には九谷・鈴榮堂の章仙画によるタイル絵。入り 江に張り出した和館。前景に大胆に松が横切り、後方には山が描かれている。もう一枚は、河 口の図。後方に富士山と海。手前に川を下る帆かけ船が描かれている。いずれも細部まで描き こまれている。なかなか優れたタイル絵だ。

奥壁は北鎌倉・新世美術の富士山のペンキ絵。だいぶ剥落がすすんでいる。女将は来月には描 き変えると話していたけど、新世美術は廃業しているし、どの絵師が描くか尋ねても分らない ようだった。さらに奥壁には、ペンキ絵の下に水槽が仕込んである。かつては金魚などが泳い でいたんだろうけど、今は鉢などが置かれている。





土曜日の16:30から17:30に滞在。帰り際に4人の客が入って来た以外は、終始、小 生1人だけだった。銭湯としては、味もあるし、優れていると思う。元町の渡船場や花街との係わりなど、歴史的背景の面白さもある。ただ、そう長くはないんだろうな。そんな感じがした。

本厚木の町で好みの飲み屋を探し歩くのが億劫になって、 相模大野、藤沢を経由して大船に戻った。
いつもの観音食堂。土曜日なのでゆっくりする。

今日撮影した写真をスライドショーで見ながら、ビール(小)、燗酒2合、塩らっきょ2皿、刺 身定食の上だけ、さんまの開き定食。
絵になりにくい風景だったということもあってカメラ2台で600枚も撮影している。どうりで、飲み屋探すのも面倒になるわけだ・・・。
そして、相席の向いの女性2人が食うわ、飲むわ・・・。びっくり。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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女湯


女湯


男湯





女湯








渡船場の石碑