玉乃湯（三重県名張市榊町）

差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2007年5月26日土曜日 11:58
宛先: 銭湯ＭＬ (sento-freak@kt.rim.or.jp)
件名: 玉乃湯（三重県名張市榊町）

ナカムラです。

今日（5/4）は、「玉乃湯（三重県名張市榊町）」に行ってきました。
名張駅(近畿鉄道大阪線)から、０．８キロ、８分くらいです。

水路の傍らの、人だけが通ることのできる、細い舗道に面している。コンクリの煙突に、洋風の趣きがある白亜のファッサード。隣の家も昔は料亭だったのか、塀や建物がそれらしい造りになっている。

今までに訪れた銭湯の中では、西大寺の「柳湯」と甲乙付けがたい風情あるロケーションだ。脱衣所には、そんなロケーションの、同湯を描いた絵が掛っている。画家も、絵を描きたくなるような、風情ある銭湯だ。

同湯のあるエリアは、闇ロードと揶揄される、｢サンロード｣という繁華街の中心近く。８０歳は超えているだろう相客の話では、この界隈は、かつて人力車が行きかっていたという。芸妓衆も人力車で同湯へ訪れた。洒落た造りの背景には、そんな歴史と関係があるのかも知れない。

暖簾を潜るとエントランススペース。番台の背の部分が入口方に張り出している。木製の細かな意匠が施され、洒落た雰囲気がある。下足箱の錠はがっしりとした旧型のおしどり錠。番台への硝子戸の木の桟も、直線と曲線を絡めた見たことがないデザインだ。

番台は、コックピットのように後方に下がっているもの。名張の番台は、｢囲い｣になっているだけで、｢台｣にはなっていない。そんな囲いの中は居心地がいいのか、大将は深い眠りの中にある。

いくらか分からない。払わないで入るのも落ち着かない。仕方なく大将を起こす。風呂代は３５０円だった。

脱衣所は、幅２間、奥行２間半ほど。天井は、折り上げ部が漆喰で固められた折上げ格天井。男女境は、簡素ながら旅館の壁のように細かな意匠が施されている。それに古くて立派な神棚が載っている。小さいながら緩衝地帯もあって、タイル張りの流しがある。

ロッカーは外壁側と男女境の下部におしどり錠のもの。床は籐の敷物で、相客はビニールの脱衣籠を使っている。その他、中央にベンチ、アナログの体重計、古くもなさそうな身長計測器、冷蔵庫、新型のマッサージ機なんかがある。狭い脱衣所なので、この新型のマッサージ機がやや不釣合いで大きい感じがする。

同湯の外壁側には床の間のようなスペースがあって、先に書いた１枚の水彩画が掛っている。写真では同じ構図は撮れない。付近の風景を再構成して、印象深く仕上げている。まさか、同じ作者ではないだろうけど、タッチが、横須賀田浦の｢湘南三浦温泉｣にあった絵と似ている。

浴室は、幅２間、奥行２間半ほどの小規模なものだ。プラ板張りながら、天井は意外にも２段型。内装のタイルは全て新しい物に置き換えられている。

島カランは１列で、カラン数はセンターから、４･３･３･４。島カランがハンドシャワーになっているほか、全てのカランにシャワーが付いている。

浴槽は、大阪銭湯のように、一段だけ階段があるもので、奥壁に接して、赤い湯の薬湯槽と白湯の主浴槽が並んである。薬湯が４０度くらい。白湯が４２度くらい。柔らかい、いいお湯だ。

男女境、奥壁ともに白いタイルでビジュアルはないものの、奥壁に鯉をデザインした円形の金属板が飾られている。一部に金鍍金の痕があるほか、周辺部には釘穴もある。いわくあり気なものだ。由来を聞こうとしたが、大将は金を受け取る時意外は深い眠りの中にある。聞き忘れてしまった。

上がりはキリン一番搾り。代金を受け取ると、大将はまた眠ってしまう。

*************************************************
ナカムラ　（Masayuki Nakamura）
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp　　
URL: http://www7a.biglobe.ne.jp/~masayuki/ （風呂屋の煙突）
*************************************************

洋風のファッサード。ファッサードは大阪銭湯に近い感じがする。

	番台裏。下足箱の錠は旧型のおしどり錠。
時折見るタイプの絵。こういうのを作る商売があるのかなぁ･･･。	奥壁には真鍮のレリーフ〔鯉〕がある。
鳥居のある三叉路の一角にある建物。同湯への小道の入口になっている。洋風の装飾のある趣きがあるものだ。	同湯は車が入れない水路べりの小道にある。
	同湯のすぐ近く。料亭が並んで人力車が走った通りだ。