帝国湯（荒川区東日暮里）

差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2010年8月25日水曜日 21:40
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件名: 帝国湯（荒川区東日暮里）

ナカムラです。

今日（8/22）は、「帝国湯（荒川区東日暮里）」に行ってきました。三河島駅（JR常磐線）から、0.5キロ、5分くらいです。

ちょっと西片に用事があったので、白山、西片、根津、千駄木と歩き、中華屋の最高峰、外壁に派手に毛沢東を描いた「毛家麺店」で昼食＆ビール・・・。そして、喫茶店・ノマドで遊廓の画人・大倉ひとみ氏との歓談を経て、三河島・帝国湯へ。

高架上の三河島駅は趣があっていい。たまたま、島式ホーム中央の風が通る待合室で休憩したけど、田舎の駅の雰囲気があった。

三河島といえば、画家・長谷川利行。この辺りを描き、三河島で倒れた。胃癌、49歳。彼の絵にある猥雑な街並みが、スポット的には残っている。

いつも、銭湯の話をしていると連れはしきりに帝国湯を推奨する。勿論、レトロで豪華、いい銭湯という認識はあるけど、近くに来た時には枯れた風情の雲翠泉を優先してしまう。それなので、今日は帝国湯を堪能しようとやって来た。

創業者が明治天皇を崇拝しこの屋号になった。昔は天井に大きな日の丸が描かれていたという。しかし、この建物は4代目で昭和27年築。日の丸は先代の建物なのだろうか。雲翠泉より南側、同湯の辺りは斑ながら戦災で焼けた一帯だ。

千鳥破風のエントランスや脱衣所棟は、このうえ無くどっしりとした黒瓦葺き。その風格はかなりのもの。大きさでは北千住・大黒湯に一歩か二歩譲る。しかし、戦後派ながら、東京銭湯の正統的系譜にある銭湯として、同湯が上を行くだろう。

暖簾は２房で、屋号を記した麻布の夏用のオリジナル。上のスリ硝子とともに「手以古久/湯」と染めている。先代の揮ごうから版を起こしたものだ。粋な暖簾だ・・・。

さて、旧型さくら錠の下足箱に運動靴を放り込む。番台は当然に木組みのもの、女湯の脱衣所や濡れ縁までもが視界に入ってくるオープンさだ。。。

折上げ格天井は肘木で支えられている。脱衣所の張出し部分の天井は網代の天井。一見して「別格」の銭湯だと分かる。

前に来た時と印象が大きく異なったのは、庭池に通じる戸や脱衣所と浴室との境、そして、庭に面した浴室の窓という窓が、全て開け放たれて「風」で満ちていることだ。簾などはなく、窓の庇に山葡萄を這わせ、柔らかに外界からの視線を遮っている。高度に計算して開放感を提供している。

むろん、脱衣所脇と浴室脇の2つの庭の手入れも手抜かりはない。滝はあれど、同湯のように水を流している銭湯は珍しいものとなっている。

浴槽は奥壁に接した深浅2槽と「千葉実母散湯」というホーロー看板が掛かるかなり深い薬湯槽。焚出し口は岩組になっていて「せせらぎ」の音を演出する。

井戸水を薪で沸かしたたっぷりのお湯。夏なので温度も42度弱と低めに調整されている。湯船に入りながらも夏の風を感じることができる心地よさ・・・・。

ビジュアルも充実している。奥壁には早川さんの「西伊豆」。5年前は違う絵師だったけど、前作と同じ位置に飛行機が描かれている。女湯（美保の松原）には、早川さんのお茶目絵、ニンジンに跨ったウサギの小さな絵が見える。

その下には、九谷鈴栄堂の章仙画のタイル絵。L字型ながらも幅4間の大絵巻。紅葉の下に庭池と鯉という絵柄も珍しい。いい絵だ。さらに男女境には幅4間半の絵柄が大海原というモザイクタイル絵もある。

こんなにも素晴らしい銭湯。清掃も行き届いている。しかし、カランの配管が相当傷んでいるようだ。庭に臨むシャワーのないカランだったけど粒状の赤錆が結構目立った。同湯の行く末が少しだけ気になった。

上がりはクーラーがなく、扇風機が何台か並ぶ脱衣所で、瓶牛乳を頂きながら夕方の風を感じていた。

日曜日の16:40から17:30。相客は10数人といったところ。ご常連は、暑いからか混んでいるなぁと、番台と話していた。

帰りは、お宝鑑定団で何百万円という値が付いたという、峯雲画のタイル絵があった旧桜湯跡を通り、都電・荒川一中前駅から王子駅に出た。

東十条「ラフェスタ」では席を取れず、十条「加賀屋」にも振られ、十条「大将」に流れる。ここがあんまりな店だったので「蕎縁・まつ屋」で気分直し。。。小生、気に入らない店に入ると言葉を発しなくなるらしい。

《前回訪問：2008.02.11.》

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