差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2018年10月3日水曜日 22:00 宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 鶴の湯(台東区浅草橋)

ナカムラです。 今日(9/7)は、「鶴の湯(台東区浅草橋)」に行ってきました。 浅草橋駅(総武本線等)から、0.5キロ、5分くらいです。

関東大震災以降、昭和2年位の間に建設されたようだ。これが正しいとすれば現役の東京銭湯の中で、最も古い建物で営業を続ける銭湯ということになる。

ファッサードはむくり破風と唐破風の二段構え。上段のむくり破風には、鏝絵で、大きな雲形と鶴の湯の幟を咥えた飛鶴が舞う図柄が描かれている。彩色が施され照明が当てられている。さらに軒に軒灯が吊されている。塀の松のくり抜きからは庭の石灯籠の灯が漏れてくる。ちょとした風情がある。10年振りの再訪だけど、以前はこんなだったかなぁ。

暖簾は深い臙脂色。黒で屋号が記されている。粋で渋い暖簾だ。風ではためく暖簾を潜れば正面と左右の3方面に松竹錠の下足箱が置かれている。透明な硝子で奥のロビーが見渡せる開放的なものだ。

カウンターは下町の女将さん然とした声が大きな方が詰めている。相方が2人分の風呂銭を払い、上がりの時刻を確認して左右に別れる。

脱衣所の天井は簡素ながら無骨で、渋が浮き出したような趣は印象深い。高窓の模様硝子も骨董品のようだ。パーティションで3分割しロビースペースを中央に置いているため、その他の箇所のオリジナル度は高くない。しかし、灯篭の明かりと古風な塀と合わせ、十分なイニシエの空間が残されている。

浴室は幅3間、奥行き4間。2段型の天井と壁は、塗り重ねられたペンキが襞となっている。凄まじかった猛暑が少し懐かしいくらいに、開いた窓から初秋の風が入って来る。

記憶では井戸水のミネラルで浴室全体が白っぽかった印象があった。しかし、カランはともかくとして、そんなことは無い。特に床の中判の白色系のタイルは磨きあげられ、実に気分がいい。

お湯は井戸水を沸かした、すっきとした熱めのもの。深浅2槽とも43度弱といったところか。辺りは生粋の下町。和手拭い一本で銭湯に入りに来ている御仁もいる。

ビジュアルはちぎり絵調のモザイクタイル絵で、茜色に染まる夕景の大海原に舟が走る絵柄。

相客はサッと上がっていく人よりも、じっくりと浸かって、脱衣所でもゆっくりと寛ぐ客が多い。ここに来て寛ぐことが出来る、そんな位置付けの銭湯のようだ。

上がりは瓶入りのブルガリアヨーグルト。テレビでは忠犬ハチ公の興味深い話をやっていた。“ここまで引っ張るかぁ”というくらいに、CMが多くて長い。なかなか席を立てなかった。

ハチは、日々、松濤から東大(駒場)まで飼主である上野博士を送り迎えしていたという。ただ、主は出張などで長く家を空けた場合は、渋谷駅から帰ることが多かったという。突然に還らぬ人となった主を迎えに、ハチは出張の時のように渋谷駅に迎えに行き、犬座という待ちの姿勢でずっと待ち続けた。いい話だった。

金曜日の19:00から20:00に滞在。相客は7、8人。前回は真冬に来ている。季節が違うと印象も違う。以前よりも洗練された外観もあって、印象は良かった。

上がりの一杯は、駅までの途中にあった『駒忠』。大衆居酒屋兼割烹小料理屋という感じだった。勘定も高くなく納得感があるものだった。湯上りも、満足、満足。

《前回訪問:2008.02.04.》

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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